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「IoT畜産業」が世界を救う理由未来の食糧難に耐えられるか

IoTの普及が進む今日、農業や畜産業への導入が注目を集めている。今後増大を見込む食肉需要を背景に、IoTは畜産農家をどう支えられるのか。

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気候変動など、微細な変化にも対応できるIoTへの期待は大きい

 近年、あらゆる機器がネットワークを介してつながる「モノのインターネット(IoT)」への注目度が高まり、その応用範囲も広がっている。新たな分野への革新的なIoT導入事例が増えており、さらなるIoT活用分野の開拓が続いている。そうした分野の1つが、畜産業だ。

 畜産農家は、IoT導入によって、飼育している家畜のデータをより正確に管理し、生産性を伸ばしている。2000年代から登場し、ITを活用して効率性や収益を上げる、いわゆる“精密農業”の基盤にも、IoTが普及しつつある。

増大し続ける世界の食糧需要とは

 一般消費者の嗜好やニーズは年々変化し、産業界も、より一層進化する必要に迫られている。さまざまな法規制が加わる業界で柔軟に進化を続けるビジネスこそ、顧客を常に満足させられる。農業も、同様の進化を経験してきた。今日の消費者は、自分たちの口に入る牛乳や肉といった食品の生産状況に関心を持っている。例えば、家畜の健康状態、家畜への投薬状況、そうした薬品の効能と副作用などだ。

 農業従事者は、家畜に与える飼料や投薬について、正確な記録をきちんと残しておく必要があるだろう。国によっては、そうした内容を法律化している。例えばドイツの場合、畜産農家は、「ドイツ抗生物質耐性戦略(DART)」に基づき、家畜に使用した抗生物質の詳細な記録を付けなくてはならない。こうしたデータの取得や管理を徹底する目的に対して、従来のデータ管理手法は、十分に効率的とは言い難い。畜産農家が業界と消費者双方のニーズに応えるためには、厳密な監視を必要とする項目が存在する。IoTは、そうした取り組みを推進する有力な手法として、注目を集めている。

 国連が2017年6月に発表した予測によれば、全世界の人口は、2050年には約96億人に達するという。この予測は、農産物を含む食糧の需要、とりわけ家畜がもたらす食物の需要が大幅に増加する未来を意味している。需要に応じて農業を発達させ、家畜の生産性を向上させることは、人類にとっていわば“必須の課題”だ。

 国連食糧農業機関(FAO)が2012年に6月に発表した見通しによれば、2050年までに、世界の食肉需要は合計4億5000万トン(牛肉1億6000万トン、羊肉2500万トン、豚肉1億4300万トン、家禽1億8100万トン、卵1億200万トン)に達するという。

IoTは畜産農家に何ができるのか

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