Apple「Business Chat」とは? iPhone/iPadのチャット新機能が注目される理由:企業のコンタクトセンターとiPhoneユーザーを簡単に接続
Appleが企業向けチャット機能「Business Chat」をリリースする。このアプリが、企業のコンタクトセンターの役割を一変させるかもしれない理由とは何だろうか。
Appleは2018年春、企業向けチャット機能「Business Chat」のβ版を公開する。Appleの期待通りに、企業がBusiness Chatを介してカスタマーサービス担当者と何億人ものiPhoneユーザーをつなぐことになれば、コンタクトセンターはモバイルユーザーへのリーチを一気に拡大することが可能だ。
業界専門家は2つの理由から、Business Chatがビジネスメッセージング市場において競合製品よりも多くの注目を集めると予想する。理由の1つは、Appleが提供するモバイル決済サービス「Apple Pay」にある。もう1つの理由は、Business Chatがアプリを新たにダウンロードせずに利用できることだ。
大半の企業向けメッセージングプラットフォームは、まずアプリをインストールし、ユーザープロファイルを作成する必要がある。だがAppleのBusiness Chatは、ソフトウェアアップデートを実施しているiPhoneユーザーであれば、誰でもすぐに利用可能だ。ユーザーは個人情報を明かすことなく、企業にメッセージを送信できる。
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Business Chat機能を使えば、iPhoneユーザーはメッセージアプリ「iMessage」で企業と会話しながら、質問したり、予約を入れたり、製品を購入したりできる。Business Chatを導入した企業については、AppleのWebブラウザ「Safari」や地図アプリ「Apple Maps」、検索機能「Spotlight」、音声アシスタント「Siri」などの検索結果に企業名とともにメッセージアイコンが表示される。エンドユーザーはそれをタップするだけで企業とのチャットを開始することが可能だ。
顧客中心のビジネスを目指し、顧客の多くをAppleユーザーが占める企業であれば、Business Chatを有効に活用できる可能性がある。「そのような企業はBusiness Chatの導入を検討すべきだ」と調査会社J Arnold & Associatesの代表を務めるジョン・アーノルド氏は語る。
Appleは既にBusiness Chatの開発者向けプレビュー版をリリースし、導入希望企業によるオンライン登録を受け付けている。Appleは今春リリースするモバイル向けOS「iOS」の最新版「iOS 11.3」でBusiness Chatのβ版を公開する予定であり、現在LivePersonやGenesys、Salesforce.com、Nuance Communicationsなど、カスタマーサービスプラットフォームの主要4社との連携を進めている。クレジットカードのDiscover Financial Services、ホテルのHilton Hotels and Resorts、生活用品販売のLowe's Companies、金融大手のWells Fargoなどが当初の導入企業となる予定だ。
Facebookの企業向け「Messenger」や、WhatsApp社の「WhatsApp」、Tencentの「WeChat」、LINE社の「LINE」、Kakaoの「Kakao Talk」といった競合プラットフォームとは異なり、AppleのBusiness Chatは基本のOSに組み込まれている。「Business Chatを使用する企業にとって、その違いは大きい」と調査会社451 Researchでカスタマーエクスペリエンスや商取引などの分野を担当する主任アナリストのキース・ドーソン氏は指摘する。
「Android端末ではなくiOS端末のユーザーであれば、Business Chatが企業への連絡手段として常に使える状態にあるということだ」とドーソン氏は語る。一方、競合サービスには、まず利用者にアプリをダウンロードしてもらわなければならないというハードルがある。
Business Chatがコンタクトセンターの再編を加速
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