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AIによるカスタマーサービスインサイトの導入Computer Weekly製品ガイド

カスタマーエクスペリエンスを極限まで高めた「サイキックピザ」を実現するため、カスタマー分析アプリケーションにインテリジェンス層を追加する必要がある。

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 カスタマー分析ツールはビジネスインテリジェンス市場の最先端にある。収益向上に当たっての顧客の重要性を考えると、この状況は変わりそうにない。

 そうした技術を使ったカスタマーエクスペリエンスの強化はGoogleやAmazonといったハイテク企業がリードしているが、小売り大手や銀行、通信分野の企業もそれほど後れを取ってはいない。そうした企業のほとんどは何年も前から、特に販促部門やカスタマーサービス部門で、カスタマー分類ツールやソーシャルメディアモニターツールといったカスタマー分析製品を利用してきた。

 商品・価格レコメンドエンジンから検索における自然言語処理、チャットbotのような仮想アシスタントに至るまで、さまざまな人工知能(AI)ベース技術が導入され、この市場はさらなる前進を始めている。

 「カスタマー分析技術は、コールセンター担当者のデスクトップやWebエクスペリエンスのパーソナライズに関係するところまで広く普及している」。451Researchのカスタマーエクスペリエンス&コマース担当調査ディレクター、シェリル・キングストン氏はそう語る。

 「だが、カスタマーサービスアプリケーションのインテリジェンス性とコンテキスト性を高め、プロフィールや場所に基づいて顧客対応を最適化することは、まだそれほど一般的になっていない」

 SAPやOracleといったサプライヤーは、この方向へのシステムアップグレードに着手している。DataSiftやJanrainといったサプライヤーも、広範な顧客を持つカスタマーインテリジェンスプラットフォームで頭角を現しつつある。こうしたプラットフォームは、顧客の個人情報や取引情報、満足度調査のような主観的なデータを関連付けて分析する。これに競合相手の現状や業界全体の状況、一般的な傾向を加味して、情報を広範なコンテキストに照らし合わせる。

カスタマーエクスペリエンス革命

 Accenture DigitalのAI担当マネージングディレクター、レイ・アイテルポーター氏は、数年内にカスタマーエクスペリエンスに革新が起こり、顧客と売り手の両方が恩恵を受けると予想する。「消費者には適切な製品がタイミング良く、手の届く適切な価格で提示される。これは、在庫と無駄を減らしたい売り手が望むことでもある」

 アイテルポーター氏の予想では、5年以内には確実に、高度にカスタマイズされた商品の提示が普通になり、従来のカスタマーサービスの要素はビッグデータに基づくAIシステムによって処理されるようになる。AIは過去と現在の消費者動向に加え、幅広いパターンやトレンドを分析して顧客対応を最適化する。

 その結果、インターネットの価格キャンペーンはさらにターゲットを絞り込み、顧客からの一般的な問い合わせはチャットbotが処理するようになる。AIソフトウェアはまた、顧客の摩擦点を減らす目的でも使われるとキングストン氏は言う。

「重要なのは、コンテキストに基づく適合性。つまり顧客に適切な情報を適切なタイミングで提示すること、あるいはより素早く適切な人員に対応させることだ。システムのインテリジェンス性は一層高まり、これによってカスタマーエクスペリエンスが最適化される」(キングストン氏)

 例えば、いずれは通販サイト全体がリアルタイムで構成されるようになり、ユーザーが目にする内容は個人に合わせて最適化されるため、友人や近隣の人が目にする内容とは大きく異なったものになる。一方、物理店舗の試着室に入ると、拡張現実(AR)ミラーで他の選択肢やパーソナライズされた商品が提示される。客は在庫があるかどうかを確認でき、もし在庫がない場合はインターネットで注文する選択肢も示される。

サイキックピザ

 究極的な目標は、いわゆる「サイキックピザ」のエクスペリエンス創出にある。この用語は、顧客サービス研究者で起業家のジョン・グッドマン氏が最初に作り出した。

 Capgeminiのインサイト&データプラクティス担当最高技術適任者(CTO)ロン・トリド氏は、この用語について次のように解説する。「例えば金曜日の午後9時におなかを空かせていると、突然呼び鈴が鳴って、注文もしていないのにお気に入りのピザが届く。これは、予測性を極端に高め、ニーズを見越して完全にシームレスなエクスペリエンスをリアルタイムで提供するレベルにまで顧客に対する理解を深めるということだ」

 だが、売り手は信頼されることと気味悪がられることの間で慎重なバランスを取る必要があるとトリド氏は言う。

 「このアプローチでは、企業が予測性を高めることができる。だが、適切なプライバシーおよびセキュリティ対策を講じる必要もある。そうしなければ、他のことは忘れられてしまう」。トリド氏の同僚で、英Capgemini Consultingの金融サービス責任者、クリス・ル・セージ・デ・フォントネー氏はそう語る。

 カスタマーエクスペリエンスに大きな利便性を付け加えるためには、組織がターゲットとする消費者のことをもっとよく知る必要がある。そのためには、分析ツールを使って個人情報を確実につかみ、有効活用しなければならない。

 だが、顧客に進んでそうした情報を提供してもらい、その情報を操作させてもらうためには、そのメリットを認識させる必要がある。「その過程では、幾つかの障害に突き当たるだろう。それをうまく乗り越える企業もあれば、とんでもない過ちを犯す企業もある。だが成功の秘訣(ひけつ)は、2つの世界のバランスを確立することにある」。トリド氏はそう話している。

事例:Ve、デジタルマーケティングキャンペーンで超パーソナライズを実現

 「われわれが描く5年後の世界では、他人と同じカスタマーエクスペリエンスを経験する人は誰1人としていなくなる。Webサイトは、個々のユーザーが誰であるか、そして何をしているかに反応するようになる」。デジタルマーケティングサービス企業Veのマネージングディレクター、デービッド・マリナンヘイエス氏はそう予測する。

 実際に、こうしたアプローチは「日常生活で当然のものになり、もしそうでない場合はカスタマーエクスペリエンスが悪いと感じるだろう」と同氏は言う。

 VeはVirgin Mediaや日産自動車といった顧客のインターネット広告や宣伝キャンペーンを手掛けており、既に独自の顧客獲得、転換・再交流技術を使って消費者とその意図の理解に努めている。だが同氏によると、2018年6月にリリース予定のパーソナライズソフトウェアでは、分析とリアルタイムの最適化という点で、状況を完全に新しいレベルへと転換させる意向だ。その主な目標は、サイト離脱率を引き下げることにある。現在の離脱率は、価格の問題と不適切性が原因で、業界全体で約60%、新規ユーザーでは98%にも達する。

 「ビッグデータと機械学習技術は、Webの仕組みを根本から変えるだろう。情報は十分にある。それも、誰かが過去にそのサイトを閲覧したことがあるといった無駄なデータではなく、出費した額や分野といったインテリジェントなデータであり、それによってシステムがリアルタイムで顧客への提示内容を調整できる」(マリナンヘイエス氏)

 だが単一の顧客データのみに基づく単一ブランドのその場でのパーソナライズにとどまらず、Veは世界中の顧客から匿名化した情報を取り入れ、個々の消費者についてより完成された視野を提示することを目指す。

 「われわれは匿名化したデータを取り入れる。旧来は、そのために長い時間が必要だった。だがAIがあれば、2回の訪問だけで複数のデータポイントを使って物事を推論でき、相手が誰かを知るだけでなく、その行動についての構図を描くことができるようになる」

 その目標は、何十億ものデータポイントを超高速で処理してパーソナライズのプロセスを見えないようにすることで、「魔法のように感じさせる」ことにあるという。これで消費者の前には継続的に適切な商品が表示されるようになる。その内容は「継続的に自己最適化」されて、価格は値引きへの反応に応じて変化する。

 「デジタル広告は全ビジターの68%を電子商取引サイトへと誘導する。だが現時点でその80%は空振りに終わる。つまり、広告費の大部分は無駄になる。しかし今後5〜10年でAIがさらに高度化すれば、この数字は20%を切るところまで低下するだろう」

 最初の目標は、空振り率を毎年数ポイントずつ引き下げることにある。「それでも小売り大手にとっては、売り上げが何百万ポンドも増えることになる」とマリナンヘイエス氏は言い添えた。

事例:Meon Valley Travel Group、1歩先を目指す

 AIシステムは、現在よりもはるかに素早く顧客のニーズに反応できることから、旅行業界の未来に大きな役割を果たす。旅行マネジメント会社Meon Valley Travel Groupのコーポレートディレクター、コリン・ボディー氏はそう考える。

 「マネジャーが『Alexa』や『Siri』のような技術に尋ねるだけで、常に旅行客のことを把握して、どの程度出費しているのかを知り、その情報を即座にフィードバックできる日が来るだろう。旅行計画についてのコメントを求め、同時にポリシーを描かせることも可能になる」

 そうしたシステムでは、便の遅れなどの問題を自動的に顧客に知らせたり、ホテルに到着した際にコーヒーが出されるように手配したりするなどして好感度を高めることもできる。「これは現状からの自然な展開になるだろう。だが今後の業界では大きな一画を担う。要するに、顧客にもっと素早く価値を提供できることに尽きる」とボディー氏は言う。

 例えば現状では、電子メールで顧客から寄せられた質問への返答に要する時間は、業界の平均で約4時間。だがMeon Valleyでは、オフライン予約システムを自動化することでこの時間を1時間半に短縮することができた。

 1年ほど前、同社は電子メール製品の「Outlook」を、顧客分析機能を搭載したFreshworksのカスタマーサービスソフトウェア「Freshdesk」に入れ替えた。これは、顧客とのコミュニケーションを一元化し、担当者が返答に要した時間や予約がピークに達する時間の把握、コンバージョン率の追跡など、あらゆることに利用できる。

 この情報には、顧客満足度調査の結果も含まれ、業績レポートの生成にも利用できる。「即効性が高まる世界において、自分たちの手元に情報を持つことは、スタッフの生産性を高めて、自分たちの顧客に何が起きているかを把握する助けになり、われわれと取引する顧客のエクスペリエンス向上につながる」。ボディー氏はそう結んだ。

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