「ガートナー データ & アナリティクス サミット 2018」レポート
アサヒビール×JAL×SOMPOホールディングス、データ活用のための組織と人材を語る(1/2 ページ)
データ分析を担う人と組織はどうあるべきか、企業においてデータサイエンスに取り組む3人の担当者が語り合った。
自社のビジネスにデータを活用するための責務は、どの部署の誰が負うべきか。
ガートナー ジャパンが2018年6月15日に開催した「ガートナー データ & アナリティクス サミット 2018」におけるパネルディスカッション「三者三様の経験から学ぶ、データ活用人材と組織の在り方」では、多くの企業が答えを出しあぐねている課題について、アサヒビールの山本 薫氏(経営企画本部デジタル戦略部担当副部長)とSOMPOホールディングスの中林紀彦氏(デジタル戦略部チーフ・データサイエンティスト)、日本航空の渋谷直正氏(Web販売部1to1マーケティンググループアシスタントマネジャー)の3人が、それぞれの立場から語った。モデレーターはガートナー ジャパンの一志達也氏(リサーチ部門主席アナリスト)が務めた。
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所属する組織も個人の経歴も異なる3人だが、それぞれ、どういう形でデータと向き合っているのか。
まず、アサヒビールの山本氏は人事給与システム導入やBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)、マーケティングリサーチ、経営企画など、多岐にわたる部門・業務を経て、2014年9月に現職に就いている。
アサヒビールの中には、デジタルと名前の付く部署が2つあるという。1つが山本氏の所属するデジタル戦略部、もう1つが消費者との接点を作るデジタルマーケティング部で、こちらはマーケティング本部内に設置されている。
デジタル戦略部では全体の戦略策定に関わる一方、機械学習を活用した新商品需要予測などに取り組む。在庫切れや作り過ぎによる廃棄を避けるためには、経験や勘に頼るのではなく、データに基づいた出荷量の適正化が不可欠になっているのだ。
日本航空の渋谷氏は営業部門を経てWeb販売部で航空券などのレコメンド施策の立案・企画、実施に当たる。顧客の閲覧傾向に応じてお薦めするコンテンツを使い分けた取り組みは、購入率アップなどの成果を上げ、2014年には『日経情報ストラテジー』による「データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤー」を受賞している。
SOMPOホールディングスの中林氏は日本アイ・ビー・エムを皮切りに、オプトホールディングなどでデータサイエンティストとしてキャリアを築いてきた。2014年4月からは筑波大学大学院の客員准教授としてデータサイエンス人材育成にも取り組んでいる。中林氏は3人の中で唯一、事業会社ではなく全体を統括するホールディングス側に属する。グループ内の事業会社でもそれぞれデータ分析に取り組んではいるが、中林氏の所属するデジタル戦略部は、「国内損保」「国内生保」「介護ヘルスケア」「海外事業」に次ぐ新しいドメインを作ることをミッションとしている。
データサイエンティストをどう確保するか
多くの企業において、データを扱える人はそれほど多くない。そうした中、データ分析人材をどう確保あるいは育成すればいいのか。一志氏は3人の意見を聞いた。
中林氏は、デジタルハリウッドが運営するエンジニア起業家の養成学校「ジーズアカデミーTOKYO」と、SOMPOホールディングスが連携して実施する「DATA SCIENCE BOOTCAMP」について紹介した。中林氏はそこで講師を務め、データサイエンティストを短期間で育成することに取り組んでいる。中林氏はデータサイエンティストの適性について「統計学など専門知識が必要な場合もあるが、実際に現場で求められるのは、データをクレンジングして提案ができるようになること。データのことだけではなく、ビジネスが分かっている必要もある」と語る。
データサイエンスとビジネス、さらにいえばITまで深く理解している人材がいれば、もちろんそれに越したことはない。だが、現実的にはそうした人は少ない。故に、日本航空の渋谷氏は、「全てに長けた人を求めるのではなく、それぞれの分野ごとに詳しい人が集まって、ツールを活用しながら皆で協力してやっていければいい」という考えだ。「私の部署でも、統計学を専門的にやっていた人間は私以外にいない。一方で私も、IT分野は経験がないので、助けてもらいながらやっている。チームでやっていく場合、ビジネス領域の人が中心となって引っ張っていくとうまくいくと経験上感じる」(渋谷氏)
山本氏は「そもそもデータが嫌いという人は難しいが、そうでなければ、使いやすいパッケージもあるし、きっかけを与えてあげればできるようになるはずだ」と語る。ツールを活用することで、ある程度分析のハードルは下がるというのだ。
「いきなりツール」に問題はないか
分析チームのリソース不足をツールが補完してくれるのは間違いない。だが、使う側に全く何の予備知識も必要ないのか。統計学を学んだり、データサイエンスの世界で広く使われているプログラミング言語の「R」や「Python」を使えるようにしたりしておく必要性はないのか。
渋谷氏はこの問いに「人の書いたプログラムを読むのはしんどいし、チームで分析をするのであれば、ツール活用から入っても問題ないと考えている」と即答した。「RやPythonを本当に勉強しようと思うと、難しくて皆、途中で挫折してしまう。統計に入る前にコマンドラインが難しくて挫折してしまう人もいる。一方でツールから始めてみると、面白いので、意外とみんな使いこなせるようになる」と語る。
「ツールから入ってもいいが基本的な統計学の知識は必要」と語るのは山本氏だ。専門的な知見はチームの中に外部スタッフを入れて補うことはできる。しかし「外部のスタッフと会話が成り立たないといけない。『こういうアルゴリズムを使っています』といわれて、それが自分で書けなくても意味は理解している必要がある」(山本氏)
学生を教えている立場でもある中林氏は「学生は仕組みを知っておかなくてはいけないし、モデルを作ってシステムに組み込んで回すことを考えるとプログラミングができた方がいい。もちろん、現場の人たちがいきなりPythonを触るのは難しいし、そこはツールから入ってもいい」と語る。要は、その人に何をやってほしいかによって、教育すべき内容も変わってくるということだ。
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