千葉大学病院「SHACHI」が実現した、医療情報連携を持続させるエコシステム:使いたくなるPHR/EHRの姿【後編】
患者が自身の健康情報を管理し、医療機関と共有できる「PHR」は、まだ身近な存在とは言い難い。普及とサービス維持の鍵となる「予算/収益の確保」を、千葉大学医学部附属病院の「SHACHI」はどう実現したのか。
医療業界に限らず、あらゆるシステムは、構築と運用に大きなコストを要する。これを賄うだけの収益なしに、システムを維持することは難しいものだ。医療情報の電子化を支える「EHR」(Electronic Health Record)や「PHR」(Personal Health Record)は一般的に、多くの患者に普及するほど価値が生まれるという性格を持つ。利用者から対価としてのシステム利用料を徴収するのは容易ではなく、その多くは無償のサービスである。EHRは、病院の電子カルテなどに保管されている診療情報を複数の医療機関で共有する仕組み。PHRは、患者自身が医療情報や健康に関する情報を収集・管理して活用することを目的とした医療情報の電子化基盤を指す。
千葉大学医学部附属病院の医療・介護連携システム「SHACHI」(シャチ)は、PHR/EHRにおける2つの課題解決を目指し、2017年10月から稼働しているシステムだ。その課題とは「医療情報連携にかかるコストの低減」と「持続可能性の高いビジネスモデルの実現」である。サービスを維持するための収益をどう確保するか。同院が選択したのは、医療データ解析という新ビジネスの創出だった。国民の医療情報を匿名化して研究開発での活用を後押しする「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律(平成29年法律第28号)」(通称:次世代医療基盤法)の施行を目前に控え、医療データ解析ビジネスには追い風が吹いている。医療機関にとっては、自ら予算を確保することで自律的な運営を実現しやすいというメリットもあるだろう。
前編「千葉大学病院『SHACHI』が目指す役割――ベンダーロックイン打破と医療情報連携の促進」に続き、後編となる本稿では、SHACHIの普及状況とともに、「持続可能性の高いビジネスモデルの実現」に向けて、同院がどのようにクラウドベースのシステムを構築したかについて紹介する。
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