次世代標準仕様「FHIR」が、レガシーシステムだらけの医療ITの救世主となる理由:APIでは解決できない、レガシーシステム連携
医療業界にはレガシーシステムが多く存在し、API活用を阻む障害となっている。この事情から、医療情報の相互運用性を目指した次世代の標準仕様FHIRへの関心が高まっている。
米国規制当局は、電子医療記録(EHR)システムと他のソースの患者データとの相互運用性を高めるよう医療機関に働きかけている。そのため、レガシーシステムを利用する病院は、新しいプログラミング手法を模索している。
国家医療IT調整室(ONC)を率いる医学博士ドナルド・ラッカー氏は、現代の医療ITの相互運用性を高める手段は医療APIだと指摘する。ONCは相互運用性を高めるために、EHRからのデータの流れや、患者監視システムにデータが戻るワークフローなどに取り組んでいる。
一般に、API(Application Programming Interface)とは、ソフトウェアアプリケーションが相互に通信できるようにするコードのことだ。医療機関には、特にオープンAPIが適していると考えられる。オープンAPIならインターネットに公開され、多くの開発者が共有している。
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ラッカー氏は、2017年7月の記者会見で次のように話した。「コンピュータサイエンスの魅力的なテクノロジーはたくさんある。当機関がオープンAPIと相互運用性を使って実施しようとしていることは、コンピュータサイエンスの新しいテクノロジーの幾つかを、医療業界におけるデータ収集との橋渡しとして機能させることだ」
進化を阻むレガシーシステム
相互運用性において医療APIが果たす役割については、2つの一般的なアプローチがあると考えられる。1つは、医療業界固有のアーキテクチャに基づいて構築したAPIを利用するアプローチだ。こうしたAPIの代表がFast Healthcare Interoperability Resources(FHIR:ファイア)だ。もう1つはRepresentational State Transfer(REST)などの一般的なエンタープライズアーキテクチャに基づいて構築したAPIを利用するアプローチだ。RESTful APIは、Web開発内での使用に適しているため、「Twitter」や「LinkedIn」などの大手Webサービス企業が利用している。
Children's Mercy Hospitalで副院長、CIO、最高データ責任者を兼任するデイビッド・チョウ氏は次のように述べている。「他の業界を情報交換の点で見てみると、APIを利用するのが一般的になっている。APIが医療機関であまり使われないのは、医療機関の大規模システムのほとんどがレガシーテクノロジーに基づいて構築してあるためだ。そのため、主要プログラミング言語を使ってAPIを作成することさえできない。これは、厄介なことだ」
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