インターネットEDIへの移行は2023年までに完了しないと困る“切実な理由”:「2024年ISDNデータ通信終了とEDI移行」まる分かりガイド【第2回】(1/2 ページ)
2024年1月にISDNのデータ通信が終了するタイミングよりも前に、EDIの通信サービスとシステムの切り替えを終わらせておかないと、どのようなリスクがあるのか。まず確認すべきことは何か。
ISDNサービス終了がEDIユーザーに与えるインパクト
前回「ISDNのディジタル通信モード、2024年終了に備えてどんな準備が必要になるのか?」は、NTT東西(NTT東日本、NTT西日本)のISDNサービス「INSネット」の「ディジタル通信モード」が2024年1月をもって終了することと、サービス終了の背景やいきさつ、今後のロードマップなどについて紹介した。ブロードバンドや無線通信の環境が広く普及した今日、ISDNはデジタル通信のサービス規格としては既に過去の存在といえるだろう。しかしファームバンキングやクレジットカード端末、警備会社のシステムなど、一部の分野ではISDNはいまだに使われている。
特にEDI(電子データ交換)の分野では、現在でもISDNや固定電話(アナログ電話)回線が当たり前のように使われており、ユーザー企業数は数十万社ともいわれている。そのためINSネットのディジタル通信モード終了は、EDIユーザー企業にもベンダーなどの業界関係者にも、多大な影響があると予想される。
EDIは取引相手があって初めて成り立つ仕組みなので、自社の都合だけで勝手に切り替えるわけにはいかない。そのためどうしても古いシステムを長く使い続けざるを得ない状況になりがちだ。これまで数多くのEDIシステムを提供してきたキヤノンITソリューションズの花澤健二氏(プロダクトソリューション営業本部企画部企画課 課長)は、「約30年前に導入した『固定電話回線とモデム』『ISDNとターミナルアダプター(TA)』の仕組みを、現在でもそのまま使うことが珍しくありません」と説明する。しかしこのままだと、INSネットのディジタル通信モード終了とともにEDIの仕組みそのものが使えなくなる。「受発注や決済といった、企業にとって極めて重要な基幹業務が停止してしまう恐れがあります」と、花澤氏は影響の深刻度を指摘する。
そのため、何らかのEDIシステムを導入している企業は、INSネットのディジタル通信モードの終了によって自社のビジネスがどんな影響を受けるのか、早急に確認する必要がある。企業によっては、古いEDIシステムを長きにわたり利用し続けてきた間に社内の世代交代が起き、EDIシステムがどんな仕組みで動いているのか把握できなくなっていることもあるだろう。
まずは以下の点について情報を収集し、INSネットのディジタル通信モードの終了が自社に及ぼす影響について把握しておこう。
- 取引先との受発注や銀行への振込依頼などでEDIシステムを利用しているかどうか
- 利用しているとしたら、どんなシステムを利用しているか
- 利用しているEDIシステムは、どんな回線を使っているか(固定電話回線、ISDN、光ファイバーなど)
- 利用しているEDIは、どんなプロトコル(通信手順)を採用しているか(全銀協標準通信プロトコル、JCA手順など)
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真っ先に検討すべきは「インターネットEDI」
INSネットのディジタル通信モードは2024年1月で終了するが、これをもってそれまで利用していたISDN回線が不通になるわけではない。NTT東西はINSネットのディジタル通信モード終了に伴う影響をなるべく抑えるために、一定期間は従来のデータ通信回線を利用し続けられる補完策「切り替え後のINSネット上のデータ通信」(補完策)を用意している。具体的には、2024年1月にPSTN(固定電話回線やISDNによる公衆交換電話網)がIP網に移行するタイミングで補完策によるデータ通信に切り替わり、2027年ごろまでは従来のモデムやTAを利用し続けられるという。しかし花澤氏によれば「補完策を当てにしてEDIを使い続けるのは相当にリスクが高い」という。
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