低過ぎるストレージ使用率の最適化:Computer Weekly製品ガイド
ストレージの使用率が低下している。つまりストレージに余計なコストがかかっているということだ。なぜこのような状態が続くのか。コスト削減は使用率の向上によって解決できる。
データセンターのストレージは、推計で約30%が無駄になっている。その原因は、主にストレージ管理ポリシーとベストプラクティスが徹底されていないことにある。
スキル上の課題もストレージの使用率に影響を及ぼす。ITスタッフの数が減ってIT全般を担当するスタッフがストレージを管理するようになった結果、ストレージ管理能力を欠くシステム管理者がストレージ管理を担うケースが増えている。それに拍車を掛ける現実として、新しいストレージ製品に対しても古くて効率の悪いストレージ管理技術が使われている場合もある。
ストレージコストの削減
データセンターコストの削減を求める継続的なプレッシャーにさらされて、ほとんどのITプロフェッショナルはストレージの調達時に値引き率や価格の安さに目を向ける。だが、既存ストレージの使用率向上によるコスト削減の方が単純で効率的な場合もある。
ストレージ使用率は、利用可能または設定されたストレージ容量に対する使われている容量の割合を指す。調査の結果、データセンターのストレージ使用率は過去6年にわたって減り続けている。ストレージ使用率は2011年の67%から、2016年には過去最低の54%に落ち込み、2017年はやや改善して56%になった。これに伴い、実質的なコストは11%増大していることが分かった。
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一般的な300TBアレイにおいて、ストレージの未使用あるいは使用率の低下10%につき、ソフトウェアとサポートおよびメンテナンスを含めたコストはハイブリッドアレイの場合で約1万2000ドル(約128万円)、ソリッドステートアレイの場合は6万ドル(約638万円)に上る。もしストレージが60%程度しか使われていない場合、使用率が10%低下するごとにコストの非効率性は実質的に2倍になる。統合型システムのストレージ調達コストはハイブリッドストレージアレイに近いものの、それを上回ることもある。分析ワークロードによく使われるオブジェクトストレージのコストは、低コストのオールHDDアレイとほとんど変わらない。
ストレージの使用率が上がればIT管理コストや人件費も削減できる。未使用の容量が減れば、必要とされるストレージ管理者も少なくて済むためだ。これは翻って、ストレージ管理者や全般的な管理者の生産性向上につながる。
非効率なストレージ利用
ストレージの容量調達量は過去5年で年間15%ずつ増大しているにもかかわらず、増えたストレージは有効活用されていない。容量が増えても管理するスタッフは減り、多くの場合スタッフのストレージ管理能力も低下している。
確かにストレージの管理は簡略化され、APIやハイパーバイザーとストレージ間のソフトウェア統合のおかげでプロビジョニングが自動化されるようになった。同時に、ダイレクトアタッチドストレージがハイパーコンバージドシステムで使われるケースが増えている。だが、ストレージプロビジョニングが比較的簡単だったとしても、ストレージ管理のスペシャリストの減少とストレージ管理の実践の欠如が、既にストレージ使用率やITコストに悪影響を及ぼしている。ストレージ使用率の低下や無駄の増加は、サーバ、ネットワーク、ストレージ管理者の仕事が「統合システム管理者」の職務の一つとして組み合わされていることに起因する可能性もある。
多くの組織でストレージのスペシャリストがいなくなり、ストレージのベストプラクティスが実践されていない可能性もある。最悪の場合、文書化され、あるいは徹底されたベストプラクティスさえ存在しないかもしれない。ストレージ使用率について一致した目標がない場合もある。
例えば、Dockerコンテナが作成されてすぐに削除されるといった環境によっては、不要になったコンテナの永続ストレージが放置されているかもしれない。時間がたつほど使われていないコンテナストレージの無駄が増えるので、これは問題になりかねない。
ストレージ管理者または総合管理者は、コンテナ管理やトラッキングソフトウェアを使ってこうした残存ストレージを管理しなければならない。そうしたツールは、ストレージシステムやストレージ管理者に、不要になったコンテナストレージがいつ削除でき、他のアプリケーションやコンテナに再利用できるのかを教えてくれる。コンテナや一時データ(作成、利用、消去)のデータライフサイクルを管理するプロセスは、どんなアプリケーションの場合でも変わらない。
ビッグデータや分析アプリケーション専用のストレージ群を持つデータセンターもある。一部の分析アプリケーション(分散型ファイルシステムに使われるミラーリングなど)は、ストレージコストや効率性の観点から見ると、最高に効率が高いとは言えないかもしれない。
例えば古いバージョンのHadoopは、特に指定がない限りデフォルトのレプリケーションを使ってファイルを保存している。これは単一のファイルを保存する場合の3倍のストレージを要する。
最も効率的なオプション
管理者が最も効率の高いRAIDの最新アルゴリズムやイレージャーコーディングを使うべき理由はそこにある。同様に、ハイパーバイザーを使う際は最も効率的なストレージオプションを使っていることを、ITリーダーとハイパーバイザー管理者が定期的に確認する必要がある。
調達の際は、ソフトウェア定義ストレージ(SDS)製品の検証と分析も、システム内蔵のストレージサービスとの入れ替えに利用する前に行わなければならない。
ストレージの使用率が100%になることは勧められない。そうなれば拡張の余地がなくなるからだ。だが、ストレージ使用率を56%という低さにとどめるべき理由はない。これは約80%を目標とすることが望ましい。何十年もの間、それがベストプラクティスだった。
80%のストレージ使用率であれば、残る20%のストレージ容量は、需要のピーク時や短期的な成長のために利用できる。
ただしストレージ使用率の計算は、分析に使われる構造化されていないデータの増大や、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)および統合システムに使われる内部ストレージの量にも影響される。そうしたストレージがデータセンター内のストレージに占める割合はますます増大している。
ベストプラクティスやストレージ管理プロセスが存在しない可能性もあることから、ITリーダーはストレージ使用率のモニターや報告に関して、そうしたシステムを優先しなければならない。数百TBからペタバイト級の大規模なHCIやデータ分析インフラでは、特にそれが重要になる。
本稿はビルディス・フィルクス氏、サントッシュ・ラオ氏によるGartnerの報告書「Storage Utilization Is Decreasing, Stop Wasting Money」から抜粋した。
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