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フィンランド企業が目指す汎用量子コンピュータ&量子プロセッサ量子コンピュータの経済効果は年48兆円

フィンランドのIT企業がIBMやGoogleに対抗して独自の汎用量子コンピュータ&量子プロセッサを実現しようとしている。フィンランドの産官学連携プロジェクトは成功するのか。

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 フィンランドのエスポーを拠点とするIT企業IQM Finland(以下、IQM)には、世界初のスケーラブルな汎用(はんよう)量子コンピュータを構築するという意欲的な計画がある。同社は2019年初め、1150万ユーロ(約13億5000万円)の初期投資資金を獲得した。

 この量子コンピュータプロジェクトは、フィンランドのアールト大学のスピンアウトプロジェクトだ。このプロジェクトは、大規模でフォールトトレラントな量子コンピューティングを目的として、独自の技術をベースとした第2世代量子プロセッサの開発も行う。目指すのは量子プロセッサの大幅な速度向上だ。

 IQMの共同創設者兼チーフサイエンティストを務めるミッコ・モットーネン氏は次のように話す。「量子コンピュータは、従来型コンピュータよりも速く計算するわけではない。これまでとは全く異なる方法で問題を解決する。場合によっては、従来型コンピュータが解決できない問題を解決できる可能性がある」

 その結果、量子技術企業への投資家の関心が高まり、大学の学部からのスピンアウト企業が増えている。

 IQMは調達した投資資金で開発計画を推し進め、量子コンピューティングの画期的な進化を推進できるとしてモットーネン氏は次のように話す。「当社が前進して開発目標を実現するには、新たな資金が不可欠だ」

 量子コンピューティングの新たな分野で世界的なイノベーション競争が始まっている。IBM、Google、Microsoftなどの世界的大手企業がスタートアップへの関心を高め、量子技術を最大限に活用する方法を模索している。

 モットーネン氏は次のように語る。「当社の仕事は、これまで誰も作ったことのない種類のコンピュータを構築することだ。そのためには多額の投資が必要だ。それがなければIQMのような小さなスタートアップ企業は他社に追い越されてしまう。適切な投資計画を立てずに計画を進めても全く意味はない」

 IQMの「世界初」のスケーラブルな汎用量子コンピュータプロジェクトは、フィンランドのITと技術投資部門の注目をすぐに集めたとして、キビマキ氏は次のように話す。「量子コンピューティングは順調に進んでいる。だが、スケジュールや正確な技術ソリューションはまだ明確ではない。明らかなのは、量子コンピューティングとの関わりが、多くの業界にとって基本になることだ。技術に重点を置くベンチャー投資企業として、競争に加わるのにふさわしい時期が来たと感じている」

 IQMは量子コンピュータ用の次世代のハードウェアを構築するために、フィンランド国営VTT技術研究センター(VTT Technical Research Centre of Finland)とアールト大学との間でテクノロジー共有パートナーシップを結んでいる。同社は、同センターと同大学の超電導回路や量子技術のコア領域における豊富な研究を利用することになる。

 IQMのCEO兼共同創設者であるヤン・ゲッツ氏は次のように語る。「量子コンピューティングは、解明されていない多くの疑問に答えを出すことで世界を変える可能性がある。新薬の開発、太陽電池の改善、交通制御の最適化など、社会にメリットをもたらす多くの実用的な応用分野もある」

 VTT技術研究センターとアールト大学の力を得ることで、IQMはフィンランドにおける量子研究の中心拠点となる。そのため、同社が製品を開発するために画期的な量子研究活動に現在携わっている技術者や特定分野の専門家に接触したり、最新の処理技術を備えた製造設備を有する機関にアクセスしたりすることも可能になる。

 IQMでCTO(最高技術責任者)を務めるクアン・タン氏は次のように述べる。「専門家や設備を自由に利用できることで、当社は業界最速の量子ビットのリセットと読み取りを実証する取り組みを進める体制が整った。これにより、業界が実現可能な量子コンピューティングソリューションに近づくことを確信できる」

 数年のうちに、量子コンピュータは従来型コンピュータでは根本的に不可能だった計算を可能にするだろう。量子コンピューティングは金融サービス、人工知能、サプライチェーン、物流などの多くの業種に応用できる可能性がある。

 Boston Consulting Group(BCG)が5月に発表した分析によると、量子コンピューティングのユーザーが得られる生産性は年間4500億ドル(約48兆円)を超える可能性があるという。こうした生産性はコスト削減と収益の機会という形で得られるという。量子コンピューティング関連のメリットは、シミュレーションや最適化に複雑な要件を有する業界の企業に最初にもたらされるとBCGは予測している。

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