「コンテナエスケープ」の脅威と対策【後編】
コンテナ経由でホストを攻撃 「コンテナエスケープ」に備える3大ポイント
コンテナからホストシステムに抜け出す「コンテナエスケープ」を引き起こす脆弱性が、セキュリティ担当者にとって新たな問題となっている。コンテナエスケープによる被害を防ぐ方法を紹介しよう。
コンテナが稼働しているホストシステムに、コンテナ経由で攻撃を仕掛ける「コンテナエスケープ」の脅威は絵空事ではない。オープンソースのコンテナランタイム(コンテナの実行に必要なソフトウェア)の筆頭格「runc」に見つかった「CVE-2019-5736」など、コンテナエスケープを可能にする脆弱(ぜいじゃく)性は実際に存在するからだ。セキュリティ担当者は、コンテナエスケープにつながる脆弱性に対処する上で、以下の3つのポイントをよく理解しておく必要がある。
- 利用中のクラウドサービスへの影響
- 対策として利用できる構成オプション(会員限定)
- コンテナオーケストレーションツールの潜在的リスク(会員限定)
ポイント1.利用中のクラウドサービスへの影響
第一に、利用中のクラウドサービスへの影響については、クラウドサービスの種類ごとに分けて考えることが重要だ。コンテナをIaaS(Infrastructure as a Service)に配置しているケースでは、コンテナとそのホストシステム全体をそのIaaSで運用することが選択肢に入る。この場合、パッチを適用したり、コンテナランタイムのコンポーネントを構成したりする責任は、コンテナを運用する企業にあると言える。IaaSがたいていの場合、責任分担モデルを採用しているからだ。
PaaS(Platform as a Service)やIaaSでコンテナを利用して、マイクロサービスアーキテクチャに基づくアプリケーションを運用する場合を考えてみよう。この場合コンテナホストとコンテナランタイムのプロセスは、クラウドベンダーの管理下にあることが一般的だ。セキュリティ担当者は、脆弱なコンポーネントに対するパッチの適用をクラウドベンダーに委ねることになる。
ポイント2.対策として利用できる構成オプション
第二にセキュリティ担当者は、コンテナエスケープを引き起こす脆弱性への対策として利用できる構成オプションを理解する必要がある。前編「Dockerも利用する『runc』に重大な脆弱性 何が危険か? 対策は?」で述べたように、「Linux」のセキュリティ機能「SELinux」(Security-Enhanced Linux)を強制アクセス制御が可能な「Enforcingモード」で用いると、こうした攻撃を防げる可能性がある。OSの根幹要素である「カーネル」が明示的に許可された操作のみを実行するようになるからだ。
コンテナホストでEnforcingモードのSELinuxを利用することには問題もある。カーネルに制限を与えると、パフォーマンスやトラブルシューティングにおいて問題が発生することがあるからだ。
ポイント3.コンテナオーケストレーションツールの潜在的リスク
第三にセキュリティ担当者は、コンテナの構築や管理を自動化する「コンテナオーケストレーションツール」の潜在的なリスクを理解する必要がある。「Kubernetes」「Docker Swarm」などのコンテナオーケストレーションツールは、カーネルの制御機能やパラメータを変更することにより、セキュリティを強化できる可能性がある。こうした変更は、コンテナのホストシステムによる複数のコンテナの自動的な作成や削除の処理を円滑に実行する上で役立つ。一方でセキュリティ面でのリスクももたらす。
例えばKubernetesは、Linuxカーネルのシステムコール(OSの機能を呼び出す仕組み)を制限するセキュリティポリシーを無効にすることが知られている。そのためコンテナエスケープが悪用されやすくなる恐れがある。
コンテナエスケープへの対策
以下にコンテナエスケープをもたらす脆弱性の緩和に役立つ対策を示す。
- 使用するコンテナランタイムの全コンポーネントにパッチを適用し、クラウドベンダーにも同じことを適時実施するように要請する
- 使用するコンテナイメージを注意深く管理する
- 主要なIaaSおよびPaaSで利用できるコンテナランタイム保護ツールを使い、コンテナを保護する
- SELinuxなどのセキュアOS機能で変更できるカーネルポリシーから、オーケストレーションツールの挙動とそのポリシーに至るまで、関連する構成オプションやオーケストレーションツールのオプションについてよく検討する
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「コンテナエスケープ」の脅威と対策
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[NTTPCコミュニケーションズ株式会社] クラウド時代のネットワーク&セキュリティ、自社に適した方式や方針の見極め方 -
製品資料
[NTTPCコミュニケーションズ株式会社] 自社のセキュリティ対策は大丈夫? 自己診断リストで対策の優先順位が分かる -
製品資料
[株式会社NTTデータ] 溜めるだけのデータを成果に変える AI時代に求められる伴走型データ活用とは -
事例
[アルテリックス・ジャパン合同会社] 温室効果ガス集計の自動化と市民開発で年100時間超を削減、AGCはどう実現した? -
市場調査・トレンド
[グーグル・クラウド・ジャパン合同会社] エージェント型AI時代に既存インフラは限界? AI基盤見直しのポイントとは
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
IT製品の導入に関するアンケート「PC&デバイス」編
-
2
PHPはそもそも必要か? 脆弱性で問われる自社サイト安全性と保守負担のバランス
-
3
そのアプリ危険かも? “野良アプリ”から「Android」「iOS」を守る防御策
-
4
「年1回の外部診断」が限界に 大手小売が脆弱性管理を内製化・一元化した方法
-
5
PHP2Shellの「事前の情報流出」でパニックに パッチ公開を巡る“混乱劇”
-
6
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
7
被害額は過去最高額 それでも「サイバー犯罪者が捕まらない」3つの理由
-
8
京王電鉄・東京メトロの被害から学ぶ境界防衛 ITの侵害はどこまで波及するか
-
9
「SBOM」はただの目録に過ぎない――サプライチェーン攻撃の盲点と保護策
-
10
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
5
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
6
「EDR」選定ガイド:比較・検討フェーズで整理すべきポイントを解説
-
7
10G回線の真価をフルに享受するには? 導入前にチェックしたいポイント
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
MDMだけでは防げない? Appleデバイスに潜む5つのセキュリティギャップ
-
10
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー