テネシー州ノックスビル市が実践
工業都市が新型コロナ対策に「チャットbot」活用 何を実現したのか
米国テネシー州ノックスビルは住民に対する新型コロナウイルス感染症の情報提供に、チャットbotを生かしている。なぜ導入し、どのようなメリットを得ているのか。
米国テネシー州の商工業都市ノックスビルはここ数年、コールセンターを運営する一方で公式Webサイトやソーシャルメディアを通じて19万人近くの住民に対し、住民サービスと都市政策の変更通知を提供してきた。2020年の米国国勢調査や拡大する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策に関する最新情報を迅速に提供するため、ノックスビルは新しいツールを求めていた。そこで白羽の矢が立ったのが、チャットbotだ。
チャットbot立ち上げの背景
ビジネスチャットサービスベンダーであるQuiqのサービスをベースに構築したチャットbotは、COVID-19を含むコロナウイルスに関する基本的な質問に答えることができる。例えば感染の仕組みや安全を確保するために住民が取ることができる対策、感染症の拡散を遅らせるためにノックスビルが取っている対策などだ。住民は、ノックスビルのWebサイトまたはSMS(ショートメッセージサービス)を経由してチャットを利用できる。
ノックスビルの電話番号311および211(緊急でない公共サービスの受付電話)担当ディレクターであるラス・ジェンセン氏によると、チャットbotは2020年の米国国勢調査とノックスビルの社会サービスに関する情報も提供している。
Quiqがチャットbotを構築するのに約2週間を要したとジェンセン氏は説明する。このチャットbotはもともと2020年の米国国勢調査に関する質問を処理するためだけのものだったが、COVID-19の急速な拡大により、ノックスビルはコロナウイルスに関する情報も追加することにした。
コロナウイルスに関する情報を絶えず更新できるようにしたことで、その分、構築に時間を要することになった。チャットbotが米国国勢調査に関する情報を提供するだけであったら、構築は1~2日で済んだだろう。
QuiqのチャットbotとノックスビルのWebサイトの連携に関する問題も解決する必要があった。問題はベンダーではなくノックスビルの側にあったが、ノックスビルのWebマスターがWebサイトにチャットbot専用のページを作成することで問題を修正できた。
これらの問題を除けば、チャットbotの立ち上げは簡単だったとジェンセン氏は語る。稼働してから1週間ほど後、同氏と彼のチームは、ノックスビルの社会サービスに関する新しい情報をチャットbotに追加した。しかも自力で簡単にやってのけた。
「私ができたのだから、事実上誰でも設定できるはずだ」とジェンセン氏は笑いながら語る。
WebサイトやSMSでチャットbotを使えるようにしたことで、ノックスビルでは職員が本庁に出勤できない場合でも、コールセンターを開いたままにできるようになった。今のところ職員はまだ庁舎で住民からの問い合わせに対応している。COVID-19のまん延を防ぐためにオフィスを閉鎖すれば、職員の対応が制限される可能性があった。
「必要であれば、チャット機能をフルに活用することができる」とジェンセン氏は語る。
完全な自動化が理想というわけではない。高齢者がチャットbotを使いこなすのは無理があるし、一部の人々、特にパニックに陥っている人々は電話で人に直接話しかけたいからだ。それでも、チャットbotは安全な選択肢であり、パンデミック(感染症の世界的な大流行)が収束した後でもノックスビルではQuiqチャットbotを使い続けるつもりだとジェンセン氏は言う。
ジェンセン氏はチャットbotが想像以上に役に立つことを実感している。ノックスビルはこれを利用して社会サービスに関する情報を住民に提供し、状況が変化した場合には更新された情報を提供できる。今後、チャットbotをFacebookのメッセージアプリケーション「Facebook Messenger」と連携させる計画もある。
ジェンセン氏によれば、チャットbotはこれまでに500回以上使用されており、不具合は発生していない。住民は都合のよいときにSMSを通じてチャットbotと対話し、テキストメッセージを送信できている。
応用
COVID-19の拡大に対処するために、企業はAI(人工知能)技術とRPA(ロボティックプロセスオートメーション)の採用を急いでいる。QuiqのCEOであるマイク・マイヤー氏は、「パンデミックにより、当社には新たなビジネスの波が押し寄せている」と語る。既存のクライアントからのシステム拡張依頼も多く、直近3週間の取引は過去3カ月分よりも多かったという。
パンデミックは長期的に世界を変える可能性が高いというのがマイヤー氏の考えだ。コールセンターからチャットbotや会話型AIへと移行する企業はさらに増えるだろう。
マイヤー氏は「パンデミックが終息すれば以前の状態に戻るケースもなくはない」と考えている。それでも、この時期に企業や公的機関のチャットbot導入が劇的に増加するという予想は「否定できない」と語る。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[o9ソリューションズ・ジャパン株式会社] 「改正物流効率化法対策」徹底解説 総物流費を抑制するサプライチェーン戦略 -
製品資料
[o9ソリューションズ・ジャパン株式会社] 「サプライチェーン最適化」実践ガイド:効果的な意思決定を実現する秘訣とは? -
製品資料
[株式会社リンプレス] 非デジタル/IT人材を「自走するDX推進者」に変えるための育成ロードマップ -
市場調査・トレンド
[ワンアイルコンサルティング株式会社] AI時代の組織設計:「判断と責任」を人に残すための2つの原則とは? -
技術文書・技術解説
[ワンアイルコンサルティング株式会社] システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
1200万円のSaaS導入を回避 スギ薬局「運用費10万円」のAIエージェント構築術
-
2
「完璧な設計」なのに3000万円溶けた AWSの失敗事例から学ぶ3つの教訓
-
3
クラウド資格コレクターは評価されない? 年収1000万を分ける“OSの理解度”
-
4
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
5
高額な「AI PC」を一般従業員も使えたら? 費用のハードルを一気に下げる方法
-
6
「コピペ運用の限界」に直面するAI活用 7割超が“別画面”のまま使う理由は?
-
7
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
8
「AIバブル」は崩壊するのか? 熱狂の後に来る“尻拭い”と4つの防衛策
-
9
IT調達担当者が知るべき「IT機器 大インフレ時代の前向きな選択肢」
-
10
2035年までに1億4500万台、急拡大する「フィジカルAI」市場の勝者は誰か
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
2
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
3
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
4
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
5
「Google Workspace」活用事例34選、先進の生成AIによる組織変革の全貌
-
6
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
7
「人員を増やす」という選択肢はない 情シスが負の連鎖から抜け出すには?
-
8
「問題が深刻化しやすいプロジェクト管理」から脱却する方法とは?
-
9
Linuxのスキルを証明する“激推し”の認定資格はこれだ
-
10
NTTドコモが実践したクラウド統合監視 業務量2倍でも残業削減を実現できた理由
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー