“脱Excel”か“活Excel”か
「自作Excelツールが動かない」という泣き付きがなくならない理由と対処法
接する機会が少ない部署から突然「Microsoft Excelで作成した自作ツールが動かなくなった」と相談が――。ありがちなこうした事態を避けるために、IT担当者はどのように対処すべきでしょうか。
中堅・中小企業に限らず企業の情報システム部門は、自らが構築したシステムの主管部門とは、システムの課題やニーズを把握するために、特段緊急の用件がなくても定期的な会議を実施してコミュニケーションを重ねることが日常的にあります。一方でシステムを利用する部門からの問い合わせについては、FAQ(よくある質問とその回答)を用意したり、メールのみを受け付ける窓口を用意したりと、コミュニケーションにかかる工数をできる限り削減することが一般的です。
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情報システム部門の人員には限りがあるため、このような応対の差は合理的であるといえます。しかし普段からめったにコミュニケーションを取らない部署ほど、情報システム部門に突然「『Microsoft Excel』(Excel)で作成した自作ツールが動かなくなった」と泣きついて相談することがあるのです。
普段は情報システム部門と疎遠な部署であっても、業務のシステム化に関するニーズは存在するものです。とはいえシステム化したい業務は、必ずしも企業の根幹となる業務とは限りません。むしろ、その組織特有の業務であることが少なくありません。そして、そうした特定のニーズを満たす手段も存在するものです。
なぜそれでも“自作Excelツール頼み”がなくならないのか
クラウドサービスは情報システム部門に依頼しなくても、利用する組織が独自に導入して使い始めることが可能です。そのため組織ごとに導入して、その利用を前提とした業務フローを独自に構築することも、それほど難しいことではありません。とはいえ全ての業務をクラウドサービスのみで賄うのはなかなかに困難です。そんなタイミングで組織内にExcelツールを自作するスキルを持つ従業員がいた場合、必要に駆られてクラウドサービスの機能を補うツールを自作するようになります。
こうして作られたExcelツールは、組織の業務遂行に欠かせないものになります。ただし作成者が異動したり、クラウドサービスの仕様が変更されたりといった「状況の変化」に常に対処できるとは限りません。Excelツールの作成は、あくまで組織が担う業務を遂行するための補助的な業務であり、組織がExcelツールのサポートに対して十分なリソースを割くことはほとんどありません。結果として、いつ使えなくなるか分からないExcelツールを作成し、使い続けることになります。
つまり、
- 情報システム部門が、関係の深い組織以外と緊密なコミュニケーションを取る余裕がない
- 情報システム部門とのつながりが薄い組織が、情報システム部門と関わりを持とうとせず、自分たちでなんとかしようとする
という条件が重なってしまうと、ひとたび問題が発生したときに、情報システム部門が何の事前情報も持ち合わせていないExcelツールのサポートを引き受けざるを得なくなるのです。
社内Excelツールの把握には発想の転換が必要
このような状況を打開する手段はあるのでしょうか。そもそも情報システム部門には、全ての組織と緊密なコミュニケーションを取れるほどリソースにゆとりがありません。さらに情報システム部門はテレワークをしやすい組織であり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴うテレワークの広がりにより、今後は対面のコミュニケーションを取る機会がこれまで以上に減る可能性があります。一方で、各組織に自作Excelツールの作成の禁止を指示することも現実的ではありません。
そこで、そもそもの発想の転換を考えてみるべきでしょう。「どこの組織で、どんなExcelツールを作成しているか」を、情報システム部門自身の労力や工数を割いて把握しようと考えていると、リソース不足という問題から抜け出せなくなります。逆に各組織に「どんなExcelツールを作成しているか」を申告してもらうように誘導することを考えてみましょう。
具体的には、Excelツールに何か問題が発生した場合は情報システム部門がサポートすることを約束する代わりに、どんなExcelツールを作成したか各組織に申告してもらう仕組みの整備をお勧めします。情報システム部門のリソースは限られているので、1回の申請で提示できるExcelツール数に制限を設定します。制限を設定することで、申請する組織もExcelツールについて問題が起こったときの影響範囲を勘案し、優先順位を付けられるようになります。
サポートの質を高めるために「申請時にマニュアルや仕様書の提出を義務付ける」というルールを定める手もあります。こうすると資料を作成していなかった組織は、これから資料を作成するための工数を忌避して申請しなくなる可能性も考えられます。
テレワークのためにWeb会議ツールを導入した企業は少なくありません。ほとんどのWeb会議ツールは、PCのデスクトップ画面の共有や会議の録画といった機能を備えています。そこでマニュアルや仕様書などの資料がないにもかかわらず、情報システム部門でExcelツールをサポートする必要に迫られた場合は、Web会議ツールでExcelツールの作成者に操作や仕様を説明してもらい、記録として残すことも有効です。
要するに、人的にも物的にも企業のリソースは有限である以上、完璧を求めるのではなく、できる範囲で最大限の効果を得る方法を考え出すことが肝要です。
このコラムについて
ほとんどの企業が使っている表計算ソフト「Microsoft Excel」。便利なツールですが、本来の目的を超えて“使いこなし過ぎる”ことが、かえって業務効率を低下させてしまったり、業務の属人化につながってしまったりする場面があるのではないでしょうか。
このコラムでは、日常業務でよく見掛けるExcelの活用例を紹介しながら「こんな場面は脱Excelを考えた方がよい」「こういうExcelの活用法はお薦め」といった知見を紹介します。
村山 聡(むらやま・さとし)
1971年愛知県生まれ、名古屋大学経済学部卒、中小企業診断士。IT企業在職中に、単一業種においてキャリアを積んでいくことに疑問を感じ、どんな業界、職種でも通用する知識を得るべく中小企業診断士を取得。複数社を経て、現在の勤め先にて、コンサルタントとして、データを活用した業務効率改善に取り組む。
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“脱Excel”か“活Excel”か
ほとんどの企業が使っている表計算ソフト「Microsoft Excel」(以下、Excel)。便利なツールですが、本来の目的を超えて“使いこなし過ぎる”ことが、かえって業務効率を低下させてしまったり、業務の属人化につながってしまったりする場面があるのではないでしょうか。 このコラムでは、日常業務でよく見掛けるExcelの活用例を紹介しながら「こんな場面は脱Excelを考えた方がよい」「こういうExcelの活用法はお薦め」といった知見を紹介していきます。
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