新たな製品「SASE」はどのような機能で構成されているのか?:「SASE」を解剖する【前編】
クラウドサービスの普及など、ITの変化がもたらす課題の解決策となり得るのが「SASE」だ。ネットワークやセキュリティに関する複数の機能で構成されるSASE。その主要な構成要素を解説する。
クラウドサービスの利用が急速に拡大している。複数のユーザー企業でインフラを共有する「パブリッククラウド」、特定のユーザー企業がインフラを専有する「プライベートクラウド」、その両者を組み合わせた「ハイブリッドクラウド」、複数のクラウドサービスを組み合わせた「マルチクラウド」など、クラウドサービスの種類や利用の仕方はさまざまだ。
こうした中、昔ながらのオンプレミスのデータセンターをネットワークの中心に据える構造が大きな障害となっている。こうした状況に対処するため、調査会社Gartnerは新しい製品分野「Secure Access Service Edge」(SASE:「サシー」と発音)を提案した。SASEはネットワークとセキュリティに関する複数の製品・サービスの機能を集約した製品分野だ。
「SASE」の構成要素
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SASEを構成する機能の一つに、ソフトウェアによってWAN(広域ネットワーク)を制御する「SD-WAN」(ソフトウェア定義WAN)がある。SD-WANは、オンプレミスのインフラとクラウドサービスのそれぞれに構築したネットワークを相互接続し、単一のネットワークとして扱えるようにする。
ルーティング、回線容量(帯域幅)の調節、コンテンツ配信を高速化する「CDN」(コンテンツデリバリーネットワーク)もSASEの構成要素だ。CDNにより、特定のコンテンツやサービスごとに接続の優先度を設定したり、データ伝送速度を調節したりできるようにする。
セキュリティ面でのSASEの構成要素として、クラウドサービスの通信を監視・制御する「CASB」(Cloud Access Security Broker)が挙げられる。CASBはDLP(データ損失防止)、コンテンツフィルター、マルウェア検出・対処、エンドユーザーの行動の検査などの機能を備える。CASB以外にも、SASEは以下のセキュリティ機能を構成要素とする。
- Webアプリケーションファイアウォール(WAF)
- Webアプリケーションに対する攻撃を防ぐ
- ファイアウォール
- IDS(侵入検知システム)/IPS(侵入防止システム)
- リモートブラウザ分離
- エンドユーザーがWebブラウザで有害なコンテンツを閲覧している場合、そのWebブラウザを社内ネットワークから隔離する
SASEの登場は、クラウドセキュリティベンダーが自社製品・サービスを更新して、新機能を搭載する動きを生むだろう。SASEはネットワークとセキュリティの構造を一体化できる可能性を秘めている。
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