学生数2万人の大学が「データ分析」でオンライン教育を評価 その中身とは?:オンライン教育をより良くするデータ分析【前編】
新型コロナウイルス感染症の影響で教育機関はオンライン教育を実施せざるを得なくなった。オンライン教育を推進し、その成果を判断するためにマイアミ大学が目を付けたのがデータ分析だ。具体的に何をしたのか。
2020年春、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、世界中の教育機関がオンライン教育の実施を余儀なくされた。だが全ての教育機関がオンライン教育に精通しているわけではない。大学や専門学校などの高等教育機関ではオンライン教育が比較的発達しており、中にはオンライン講義単体だけではなく、対面での講義と組み合わせたハイブリッド講義を実践する高等教育機関もある。ただし大半の高等教育機関での講義は、講義室で実施されているのが実情だ。
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オンライン教育の早急な導入を迫られた教育機関は、学習者のエンゲージメント(学びに対する主体的な取り組み)を促し、評価する方法に思い巡らすことになった。校内にいない学習者のオンライン教育の成果やエンゲージメントを評価するには、どうすればよいのだろうか。有力な手段となり得るのがデータ分析だ。
米オハイオ州オックスフォードにあるマイアミ大学(Miami University)は1809年設立の全寮制公立大学であり、一部を除き大半の講義を大学のキャンパス内で実施してきた。同大学でシニアビジネスプロセスアナリストを務めるジェフリー・トウディー氏によると、同校はオンライン教育への全面移行を約3時間で完了させた。
マイアミ大学が実践したデータ分析の中身
「講義のオンライン化」という変化に学生がどう反応したのかをチェックするために、マイアミ大学は学生に関するデータ収集の取り組みを開始した。収集したデータに関する学長と各学部のコーディネーターへの報告には、Tableau Softwareのビジネスインテリジェンス(BI)ツール「Tableau」を使用している。
学生のデータを取得するために、マイアミ大学はオープンソースソフトウェア(OSS)の学習管理システム(LMS)「Canvas」を使用した。教員がCanvasにテスト、課題、シラバスなどの教材や資料を投稿すると、学生はそれらを利用して講義内容を履修できる。
創造性に重点を置いている講義では、LMSで収集したデータによる評価が難しいこともあったという。こうした講義では「多くの学生が既に自主的な研究活動に取り組んでいたり、体系化されていない評価が必要になったりするためだ」とミラー氏は説明する。
教職員はマイアミ大学校に在籍する全学生2万人からデータを収集するために、自ら進んで学生に電話をかけた。「あくまでも主眼は『学生が必要としているもの』を確認することにあった」と、同校でデータアナリストを務めるサラ・マシューズ氏は語る。
マイアミ大学は、学生から収集したデータを学部長や教員の間で共有できるようにした。学習者の評価に向けた取り組みを進めやすくするためだ。「このレベルのデータを学部長や教授が目にするのは初めてだった」と、同校のモリー・ミラー氏は振り返る。
オンライン教育への移行においてマイアミ大学が直面した課題は、オンライン講義が同校の教育基準を満たすようにすることだった。トウディー氏らは教育基準を確実に維持できるよう、収集したデータを徹底的に調査したという。「学生がどの講義でも同じエクスペリエンス(体験や経験)を享受できるように努めている」と同氏は語る。
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