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コロナ禍で「遠隔画像診断」が普及すると「相互運用性」が無視できなくなる技術の定着にはCIOの活躍が重要

新型コロナウイルス感染症をきっかけとして遠隔画像診断のニーズが高まり、医療ITの相互運用性に向けた取り組みが加速するとFrost & Sullivanは予測する。両者の関係性とは。

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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)は遠隔医療サービスに隆盛をもたらしている。一方で、この危機によって患者の治療に重要な技術、そして今後も引き続き必要になる技術が明らかになった。

 中でも注目すべきなのが「相互運用性」だ。医療業界ではこれまで相互運用を進める動きは緩やかだった。だが今回のパンデミックによって「他の医療ITシステムと迅速かつ簡単にコミュニケーションを取る必要性が高まった」と、コンサルティング会社Frost & Sullivanでグローバルデジタル医療プログラム部門のディレクターを務めるソニヤ・デニセンコ氏は語る。こうした取り組みを支えるインフラを用意する際は、医療機関の最高情報責任者(CIO)が重要な役割を担うことになる。

遠隔画像診断に求められる「相互運用性」の視点

 米国連邦政府の監督機関は、患者を可能な限り自宅にとどめようと尽力する中、パンデミック中の遠隔医療サービスの規制緩和や診療報酬増加に踏み切り、遠隔利用サービスの利用増加を促している。Frost & Sullivanが2020年5月に発表したレポートによると、2020年の遠隔医療市場は約64%の成長が見込まれる。

 遠隔医療サービスの利用が増加することで、医療従事者が関連技術に慣れる機会も生まれている。仮想リハビリテーション、チャットbotのほか、遠隔でも患者との信頼関係を長期的に築いていく「患者エンゲージメントシステム」などの技術だ。

 Frost & Sullivanのレポートによると、COVID-19は遠隔医療サービスの成長以上の幅広い影響を医療機関にもたらすという。同社が予測するのは遠隔画像診断への関心の高まりだ。遠隔画像診断のシステムや支援サービスがあれば、放射線科医が在宅で医用画像を診断・分析できるようになる。

 遠隔画像診断システムを導入するのは、放射線科医が少なく人手が限られる小規模病院や地方の病院、あるいは専門医に紹介する必要がある医療機関だ。通常の医療を再開し、数カ月にわたって先送りにしていた治療や手術のスケジュールを見直すようになるにつれ、画像診断の件数をこなすためにも遠隔画像診断が重要な役割を担うだろう。

パンデミックが明らかにした相互運用性のニーズ

 医療機関のCIOは、この種の医療を実現するためにはITインフラや相互運用性に注目しなければならないとデニセンコ氏は指摘。そのためには内部のシステム要件以外に目を向け、相互運用可能なシステムやサービスを考えることが必要だと語る。「そうしなければ、単なるAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)の利用にとどまる可能性がある」(同氏)

 相互運用性は医療業界でも長年重要なトピックだった。COVID-19によって「患者が必要な治療を素早く受けられるように、システムが相互連携してシームレスなデータのやりとりをする」というニーズが、ますます意識されるようになった。

 こうした医療ITの相互運用性を確立する取り組みの第一線に立っているのがCIOだ。CIOは医療機関運営の変革を総合的に考え、他の医療機関と連携してスムーズに機能するプロセスやソフトウェアを組み込む方法を検討する必要がある。

 デニセンコ氏によると、法規制とベンダーの活動の両面がネックになって、相互運用性を実現するための動きは比較的緩やかだった。医療機関がITの可能性を実現する方向へと進むと同時に「CIOの役割も変化するだろう」と同氏はみる。

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