最適なDR(災害復旧)方法の選び方:Computer Weekly製品ガイド
災害復旧の選択肢として利用できるフェイルオーバー、社内および社外施設、クラウドについて検討する。
DR(災害復旧)について、どのデータをいつまでに復旧する必要があるのかを事業部門の管理者に尋ねたとする。恐らく返ってくる答えは「今すぐ、全て」だろう。企業も顧客も、ダウンタイムやデータ損失に対する耐性は薄れる一方だ。
どれだけ早くどれだけ包括的に組織が立ち直れるか。IT部門はこれらについての見直しを迫られる。このプレッシャーのために、IT部門やDRチームは目標復旧時間(RTO)と目標復旧時点(RPO)の短縮を強いられる。
関連記事
- 大半の企業が勘違い、クラウドダウン時の責任を負うのは誰か?
- データより「人」が課題――意外に多い災害復旧の盲点
- テストしていないDR(災害復旧)計画がもたらす残念な結末
- 仮想化、拠点間フル冗長化、フェイルオーバー安全神話のウソ
- 仮想化時代のバックアップと災害復旧
これは、バックアップするデータの量と頻度を増やし、もっと迅速に復旧する必要があることを意味する。事業部門との間で合意したRTOとRPOは、復旧と事業継続のために選ぶべき技術を決定する。
IDCのアナリスト、フィル・グッドウィン氏が指摘する通り、このトレンドはDRというよりも高可用性へと向かいつつある。仮想化やクラウドの進化に伴い、多くの組織にとってその現実性が高まっている。
同期ミラーリング
事業継続と高可用性の黄金律は同期ミラーリングにある。効果的なDRのためには、ミラーは二次的あるいはバックアップ用のデータセンターかコロケーション施設、または4sl ConsultingやSungard Availability ServicesといったDRサプライヤーの拠点に置かなければならない。
その場所は、組織が直面するリスクや脅威に左右される。過酷な気象やテロといった物理的脅威がある場合、二次施設は遠隔地になければならない。その場合、ネットワークインフラに対する圧力は強まり、必然的にコストは上昇する。2つのミラーの間には、広帯域幅と、恐らくは冗長接続が求められる。
「これは事業に不可欠なアプリケーションとサービスにとっての標準だ。そのためには2つのインフラと、少なくとも1つの確実かつ適切な規模の接続が必要になるので安上がりではない」。4sl ConsultingのCEO、バーナビー・モート氏はそう話す。
同期ミラーリングは、ダウンタイムに対する耐性が極端に低く、RTOが極めて短い業種で好まれる。そうした業種には、金融サービスや一部の政府機関などが含まれる。
同期ミラーリングされたデータセンターを社内で管理することを選ぶ場合もある。これの場合、プラットフォームを常に同期させる必要があるのでコストは増大し、柔軟性は低下する。
コスト削減のため、第二の場所でそれより性能の低い構成を選ぶ企業もある。だがそれは、アプリケーションがどの程度パフォーマンスに敏感なのかに左右される。
IT部門はまた、同期ミラーリングを最も重要なアプリケーションのみに導入することでコストを削減することもできる。だが実際には、組織はストレージとデータを含む全環境を複製する傾向がある。重要なアプリケーションを切り離すためには作業が必要であり、インフラを分割することによって何かが欠落し、複製に失敗するリスクがあるためだ。
仮想化環境へのフェイルオーバー
物理環境から仮想化環境へのフェイルオーバーは低コストかつ潜在的に柔軟性が高い方法で、リアルタイムあるいはリアルタイムに近いバックアップと迅速な復旧が可能だ。
最も明らかな用途は、既に仮想化されている環境での利用だ。組織は社内ツールを使って仮想マシン(VM)を複製するか、サービスプロバイダーを使うかを選択できる。「VMware vSphere」や「Microsoft System Center Data Protection Manager」は、単一および複数の場所でのデータ保護機能を提供する。
仮想化環境にフェイルオーバーするメリットの一つは、共有インフラをバックアップ施設のために利用してコストを減らし、管理負担を軽減できることだ。
サプライヤーにとってのもう一つのトレンドとして、プラットフォームを問わないVMレプリケーションサービスが挙げられる。こうしたサービスでは、企業が代替インフラでバックアップを実行し、異種混在システムを単一のバックアッププラットフォームにフェイルオーバーできる。これはクラウドを複製に利用する選択肢への道を開くものでもある。
このモデルは、既に仮想化環境を運用している組織に適している。物理環境から仮想化環境への技術(P2V)は存在していて、全てのバックアップをVMに復元できる。だが、バックアップ用のコピーを定期的に作成してオフサイトに移す必要がある。仮想化環境へのフェイルオーバーは金融取引など、データへの継続的なアクセスを必要とする企業には適していない。
プラス面としては、現在ではほとんどのサプライヤーが仮想バックアップ用のベアメタル復旧を提供している。これは事業の迅速な復旧の役に立つ。ローカルハードウェアに障害が起きた場合に備えて、VMのバックアップをオフサイトのストレージにコピーして真のDRを実現することもできる。
専用のフェイルオーバー環境か共有のフェイルオーバー環境かという選択は、やはり企業のRPO/RTOニーズと予算に左右される。仮想化環境へのバックアップはコストを削減して複雑性を解消するための優れた選択肢だ。高度に仮想化された本番環境を運用している企業にとっては、唯一の現実的な選択肢かもしれない。
従来型のバックアップ&リストア技術は、共有インフラ、特に共有ストレージが原因で、仮想化されたシステムにはあまり適さない。ボトルネックを避けてVMを確実に復旧するためには、VM専用のバックアップシステムが最善の方法だ。
クラウドへのフェイルオーバー
クラウドはバックアップと本番環境の選択肢を広げてくれる。VM用のバックアップサービスを手掛けるサプライヤーは、クラウドストレージも提供するところが増えている。Acronis Internationalはプラットフォームを問わないVMバックアップを提供し、「Microsoft Azure」はAzure VMやAzure SQL、ローカルVMware VMをバックアップできる。Veeam SoftwareやCommvault Systemsなどの製品も、クラウドへの複製に対応している。
企業は、仮想サーバの稼働をDR計画の発動時に限定することでコストを削減できる。ただし当然ながらストレージ料金は発生する。
「クラウドへの復旧は、主に仮想化環境では現実的だが物理マシンには問題がある」と4sl Consultingのモート氏は言う。「テクノロジー次第では幅広いRTOやRPOが可能になる」
クラウドサービスはまた、バックアップハードウェアを運用するスキルや担当者を持たない小規模企業にも適している。シンプルなオンラインファイルストレージやローエンドのデータバックアップサービスからスタートし、成長に従ってアプリケーションやVMバックアップにスケールアップできる。
「DRのアシストに使われていたITは、この10年の間に大きく成熟した」とFreeform Dynamicsのトニー・ロック氏は語る。「類似のプラットフォーム間でのデータコピーやスナップショット、複製は、かつては不可能だった。法外なコストがかかっていた遠隔地間でさえも、ハードウェアレベルで存在する。同様の機能を異なるハードウェア間で実現するソフトウェアも開発されている」
ハイブリッドのアプローチ
ハイブリッド環境へのバックアップは、物理から物理への直接的なバックアップや仮想化環境からクラウドへの複製に比べて複雑になる。
理論上は、ハイブリッドであればどのワークロードをミラーリングすべきか、仮想化環境にバックアップすべきか、あるいはクラウドに複製すべきかを決定できる。問題は、どのデータやどのワークロードがどこに行くべきかを決めて、一貫性を保つことにある。
ハイブリッド環境からの復旧も、やはり複雑性が高い。IT部門は大規模な災害後、全ての要素がそれぞれのプラットフォームから復旧できることを確認しなければならない。
他にも、削除されたファイルなど、運用的な復旧に対応するための計画も必要になる。クラウドサービスの「データ取り出し料金」というコストも見過ごされがちだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.