医療従事者が“熱狂的ITユーザー”に 「仮想回診」導入病院で起きた変化:新しい遠隔診療の可能性【後編】
コロナ禍によって対面接触の機会を減らす必要が生じ、医療業界は「全く新しいワークフロー」を強いられている。COVID-19対策として「仮想回診システム」を構築した米国医療機関は、どのような変化に直面したのか。
非営利団体Nemours Foundationが運営する医療機関Nemours Children's Health System(以下、Nemours)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の対策として「仮想回診」のプロジェクトを立ち上げた。前編「病院が実現した『仮想回診』の仕組みとは? 病室カメラとビデオ会議で構築」で紹介した通り、このプロジェクトで開発された仮想回診システムは、病室の高解像度ビデオカメラとビデオ会議システム、既存の電話システムを組み合わせている。
医療従事者は仮想回診システムによって、対面式の回診と同じように担当患者の様子を確認したり、治療チームの他のメンバーと連携したりできるようになった。Nemoursでプロジェクトリーダーを務める小児科医で、医学博士号を持つパトリック・バルト氏は「仮想回診プロジェクトによって、病室を出入りする人の流れが減った」と語る。
コロナ禍が医療ITにもたらす変化
仮想回診システムは医療従事者が使用する手袋やマスク、診察衣といった個人用保護具の利用数を減らすのにも役立っている。「仮想回診システムによって患者の治療チームと家族が一堂に会することができるため、治療に協力的な患者および家族が増えている。好ましい変化だ」(バルト氏)
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COVID-19のパンデミック(世界的大流行)は「医療と医療ITに長期的な影響を及ぼす」とバルト氏は予想する。「多くの専門分野にわたる治療を必要としていても、病室への立ち入りを制限する必要がある患者は一定数存在する。これはCOVID-19の危機を脱した後も変わらない」(同氏)。Nemoursは立ち入り制限があっても問題ないインフラを構築できたため、このような小児患者に仮想回診の仕組みを提供できるという。
Nemoursで医療提供イノベーションの作戦担当バイスプレジデントを務めるキャリー・オフィサー氏によると、COVID-19のパンデミックによって医療業界は「全く新しいワークフロー」を強いられることになった。「この危機下で患者のニーズに応えるために、新しいツールを使用して、新しいワークフローに適応しようと医療従事者が意欲を燃やしていることは、大きな変化の一つだ」とオフィサー氏は指摘する。今回のパンデミック以前に、同じ意欲を生み出すのは容易でなかった。
COVID-19は治療の提供方法にも変化をもたらしている。COVID-19のパンデミックは誰も望んだことではない。それでもこのパンデミックによって「将来の考え方と働き方に小さな変化をもたらす希望の兆しが見えた」とオフィサー氏は語る。こうした動きは、患者と家族により良い結果をもたらす可能性がある。
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