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データセンターを冷却する「機械式冷却システム」主要3種の基礎と運用法データセンター冷却入門【後編】

データセンターの冷却効率を高めるには、冷却システムを適切に運用することが欠かせない。代表的な機械式冷却システムの仕組みと、適切に運用するためのポイントを解説する。

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 データセンターで使われている「機械式冷却」(メカニカルクーリング)システムは3種類に大別できる。いずれもファン、ポンプ、ループ状の配管を備え、固有の方式で「コンプレッサー」(圧縮機)を組み込んだ冷却サイクルを採用している。

 機械式冷却システムには下記の2種類がある。

  • CRAC(Computer Room Air Conditioner:コンピュータルーム空調)
  • CRAH(Computer Room Air Handler:コンピュータルーム用エアハンドリングユニット)

 両者共に、冷却にコンプレッサーを利用する。CRACはコンプレッサーを内蔵する。CRAHはコイルとファンで構成され、別の場所にコンプレッサーを設置する。コンプレッサーはかなりの電力を使用するため、データセンターの管理者はコンプレッサーを効率的に運用し、使用を最小限にとどめる必要がある。

 冷却システムの性能を示す指標に「顕熱比」(SHR)がある。顕熱比が高いほど冷却効率が高く、CRACとCRAHはいずれも顕熱比が高いことが望ましい。室内温度を下げるためには、ハードウェアの発熱や日射による熱量など、物質の状態を変えずに室内温度を上昇させる熱量である「顕熱」を奪う必要がある。顕熱比は全熱量(物質の状態変化に使用される熱量であり、温度には変化を与えない「潜熱」と顕熱の合計)に占める顕熱の割合だ。顕熱比の高い冷却システムは、奪う全熱量のうち顕熱の割合が大きいため、冷却効率が高い。

 CRACやCRAHのうち、主要な3種類の特徴を簡単に紹介しよう。

主要なCRAC/CRAH3種

直接膨張式CRAC

 直接膨張式(直膨式)CRACでは、コンプレッサーが気体の冷媒(冷媒ガス)を高温高圧の状態にした後、コンデンサー(凝縮機)が熱を外気に移して、冷媒ガスを液化させる。冷媒用の配管は長さが限られるため、各CRACは通常、それぞれコンデンサーを必要とする。

水・グリコール式CRAC

 水・グリコール(エチレングリコール水溶液)式CRACは、直接膨張式と同じく、最初に高温の冷媒ガスを作る。その後は冷媒ガスを圧縮し、ジャケット式熱交換器(熱の放散を防ぐ被服物を装着した熱交換器)に通して循環させる。ジャケット式熱交換器は高温の冷媒ガスから水に熱を移動させる。さらにポンプで水をドライクーラーに通し、ドライクーラーが熱を外気に放出する。水は熱交換器によって常温に戻され、冷媒ガスを液化させる。水は長い配管で循環させることができるため、この仕組みを複数ユニットに使用できる。

冷水式CRAH

 冷水式CRAHは、直接膨張式や水・グリコール式CRACよりも大きなコンプレッサーを使用する。冷水式CRAHは、室内で循環する水のループの周囲で冷媒を循環させる。このループは2種類あり、一方のループが冷水をCRAHに送り、他方のループが高温になった水をポンプで室外の冷却塔に送り出す。大型ファンが冷媒を冷却する。

機械式冷却システム運用のベストプラクティス

 電力消費を抑えつつ機械式冷却システムのパフォーマンスを最大化させるには、適切な設計とメンテナンスが必要だ。コンプレッサーは毎年メンテナンスを実施する必要があり、冷却塔は定期的にさび落としをする必要がある。

 他にも考慮すべき点がある。その一つが、フィルターをきれいに保つことで障害をなくし、気流を最大化させることだ。冷媒の量をチェックし、全ての重要な「エキスパンションバルブ」(膨張弁)に漏れがないことを確認することも重要だ。

 米暖房冷凍空調学会(ASHRAE)が定めるサーマルエンベロープ(熱設計範囲)内の高い温度で機械式冷却システムを運用すれば、電力消費を節約し、CRACやCRAHの処理能力を高めることができる。ASHRAEのガイドラインに従って、露点(水蒸気が凝結して露になる温度)に基づいて湿度を制御することも重要だ。

 できれば小規模の機械式冷却システムのユニットを複数用意し、低めの処理能力で同時に運用するとよい。こうした運用により、冗長性を維持しながら電力消費を最小限に抑えることができる。

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