AIOpsによるストレージの自動管理:ストレージ分析【前編】
ストレージの管理は複雑化する一方で、企業には専門家を雇用する余裕がない。AIOpsに対応したストレージ管理ツールはこの状況を改善する可能性がある。
全てではないが、大半のストレージ分析ツールはハードウェアサプライヤーが提供する。これらのツールはアレイやストレージサブシステムの健全性についての役立つスナップショットをIT管理者に提供する。だが、システムやスタック全体の限定されたイメージしか提供しないツールもある。特に複数のハードウェアサプライヤーが関与している場合は特にこの傾向が当てはまる。
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IDCのアンドリュー・バス氏は次のように話す。「大半のストレージ管理者は機器に付属するデフォルトのツールを使うだろう。企業は一元管理ツールで運用したいという願望があるが、結局は断念して機器に付属するツールに戻すことが多い」
マルチサプライヤーのストレージ監視および分析ツールが増えている。ハイブリッド環境を管理する必要性や標準APIを使うストレージが増えていることが、こうした状況に拍車を掛けている。その代表的な標準APIがREST(Representational State Transfer)だ。
マルチサプライヤーツールを使う場合は、システム全体の可視性とシステムパフォーマンスの詳細フィードバックとの間のトレードオフが必要になる。サプライヤーに依存しないツールは、今のところ全ての機器を完全に最適化できるだけのデータを収集していない。
「新しい管理ツールの多くはよりマルチベンダー対応になっている。どれでも基本レベルの機能を利用できる。何から何まであらゆることが可能になることはないが、インフラ全体の制御は向上する」(バス氏)
ストレージを含めインフラ全体を管理できる「1枚ガラス」のような単一のツールを求めるITチームは多いと同氏は話す。そうしたツールには追加のコストがかかるため、企業はそのような費用負担には消極的だ。
だが、この状況は変化している。一部、高度な管理機能を組み込んだ「Azure Stack」や「AWS Outposts」などの運用システムでの体験によるところもある。
予測ツールとAIOps
ストレージとシステムの分析ツールはよりスマートになっている。ハードウェアサプライヤーと管理ツールサプライヤーは、高度な分析やAI(人工知能)に目を向けてシステムのパフォーマンスを向上させている。
その結果、最もコスト効率の高いストレージ層にデータセットを移動する機能、障害が発生しそうな兆候を示すサブシステムからファイルを移動する機能、容量の使用状況とパフォーマンスとのバランスを最大限に高めるためにデータを統合する機能などが提供されるようになった。
クラウドとオンプレミスのリソースが混在する環境などに対処し、ビジネスにITパフォーマンスをもたらす一つの方法(場合によっては唯一の方法)としてAIに目が向けられることが増えている。
アナリスト企業ESGが最近行った調査によると、データセンターモダナイズの最優先事項としてシステム管理用のAIを視野に入れている企業の割合は約23%だったという。
ESGのシンクレア氏は次のように話す。「インテリジェンス機能はITの規模を問わず不可欠だ。IT部門には、ワークロードの進化に合わせて全環境を継続的に最適化する時間や複雑なコンポーネントの障害を診断する人材は余っていない。そのためこれらをシステムに任せようとしている」
Gartnerはこれを「IT運用向けのAI」という意味でAIOpsと称している。
Gartnerは、2025年末にはストレージやハイパーコンバージドインフラなどの新規導入の40%がAIOps対応になると予測する。2020年のAIOps対応製品は10%未満だった。
こうした新しいツールは、容量やパフォーマンスの状態を分析してサービスの中断につながる潜在的な問題を予測し、これを解決するための実践的なアドバイスを提供してストレージの使用効率を向上させる。
Gartnerでリサーチ部門のバイスプレジデントを務めるジュリア・パルマー氏は次のように語る。「ストレージツールは、容量とパフォーマンスに関する何らかのメトリクスを提供する。だがそのメトリクスを監視するにはストレージの専門知識を有する担当者が必要になるため、十分とは言えなかった。AIOpsツールは異常値、利用パターン、パフォーマンスの傾向を探し、ベンダーがサポートする特定の顧客システムや他のシステムの正常動作とその傾向の相関関係を提示する」
後編(Computer Weekly日本語版 11月18日号掲載予定)では、ストレージの自動管理を実現するツールを幾つか紹介する。
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