Riot Gamesは「データスチュワードシップ」への社内の抵抗をどう抑えたのか:「League of Legends」を支えるデータマネジメント【後編】
データの適切な定義や利用を推進する「データスチュワードシップ」に取り組もうとしていたRiot Gamesは、業務増加を懸念する社内からの抵抗に直面した。どう対処したのか。同社データマネジメント責任者が明かす。
オンラインゲーム「League of Legends」(リーグ・オブ・レジェンド)で知られるゲーム会社Riot Gamesは、ゲームに関するデータだけでなく、ビジネスに必要なデータも含め、増え続けるデータの管理に手を焼いていた。「データの所有権は誰にあるのか」「データを収集する目的は何か」といったことが見えづらくなっていたのだ。そこで同社は、データマネジメントベンダーAlationのデータカタログ「Alation Data Catalog」を導入し、データガバナンス強化に乗り出した。データカタログとは、データを扱いやすくするためにメタデータ(データの所在、意味、型などを示すデータ)を管理する仕組みのことだ。
「仕事が増える」と抵抗されたデータスチュワードシップ
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Riot Gamesはデータガバナンス強化を推し進めるに当たって、単なるデータカタログ以上の機能を求めていた。「データカタログを手に入れたからといって、『光あふれる虹色の世界』が広がるわけではなかった」。データガバナンスの技術製品マネジャーを務めるクリス・クデルカ氏は冗談めかして語る。
クデルカ氏は当時を振り返り、同氏のチームが最初にデータカタログをRiot Gamesの従業員に提供したとき「あまり反応がなかった」と話す。当時の同社には、データを利用しやすいように整理するデータキュレーションの人材とプロセスが足りなかったという。「データを識別する手段は手に入れた。だが、そのデータの所有権や細かい定義を追加するのに適した人材を社内で見つける必要があった」(同氏)
まずクデルカ氏のチームは、Riot Gamesの従業員に、自身の名前をデータとして追加するように求めた。だが「従業員は自身の仕事が増えるのを嫌がり、思うようにはいかなかった」(同氏)という。同氏のチームは、こうしたデータスチュワードシップ(データの適切な定義や利用を推進する取り組み)がいかに従業員に役立つかを明確にして、従業員の懸念を軽減しなければならなかった。
Riot Gamesにとってのデータガバナンスとは、既に存在するデータの形式を整え、その関係性を認識することだとクデルカ氏は説明する。同氏はデータガバナンスのプロセスを認識して形式を整え、ベストプラクティスを明らかにすることをチームの目標に据えた。
「従業員には、自身が既に作成して使用しているデータについて理解してほしい。データガバナンスの実現を目指すなら、データを利用する人を中心に据えるべきだ」とクデルカ氏は説明する。同氏がデータカタログの導入で重要だと考えるのは「人を中心に据えたアプローチを取り、データスチュワードシップを明確に定義すること」だ。そうすることで、データガバナンス強化を推進する速度が上がると同氏はみる。
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