「AIOps」の失敗例と、正しく導入するために最低限検討すべきこと:「AIOps」を正しく理解する【後編】
「AIOps」を導入することでさまざまなメリットが期待できるが、全ての用途にAIOpsが役立つわけではない。正しく導入するためのポイントとは。
「AIOps」とは機械学習などのAI(人工知能)技術をシステム運用に取り入れる手法を指す。前編「『AIOps』の本当の意味 “人間の代替”はよくある誤解」、中編「IT運用チームもAmazonを見習うべき理由 『AIOps』の効能とは?」はAIOpsがもたらすメリットを紹介した。本稿はAIOpsを導入する上での注意点を解説する。
AIOps導入時の検討事項
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機械学習による大量のデータ処理や分析を取り入れると、企業は顧客の行動パターンを特定してビジネス戦略を変更したり、必要なリソース量をリアルタイムで把握してシステム運用を最適化したり、インフラの監視に基づいて故障の予兆検知をしたりすることが可能になる。
注意が必要なのは、従来の運用モデルからAIOpsへの移行が良い結果を生まないことがある点だ。企業が適切な用途にAIOpsを導入したとしても、長期にわたる運用の調整が必要になり、導入から3〜5年は具体的な成果が出ないこともある。
AIOpsの導入を検討する際には、企業は次のような疑問に答えを出す必要がある。
- 対象の用途が本当にAIOpsを必要としているのかどうか
- AIOpsを導入する説得力のある根拠がない限り、計画を白紙に戻す方がいい。AIOpsに適する用途であることを見極めた上で、3〜5年の長期的な展望でAIOps導入による成果創出を目指す
- 途中で変更可能なAIOps戦略であるかどうか
- AIOpsの試験的な運用を進める中で、問題や新しい活用の可能性が出てくるため、途中で方針の転換や適用範囲の調整が必要になる可能性が高い。そのため導入を進めながら方針を転換できる戦略にしておく必要がある
AIOps導入のベストプラクティス
AIOpsの導入でよくある失敗は、不適切な用途を選んでしまうことだ。この場合、企業は投資の見返りをほとんど得ることなく、予算を短期間のうちに浪費してしまう。これを避けるには、まずはデータ分析をしてAIOpsによる効果が得られそうかどうかを評価することが欠かせない。例えばシステムの運用データや顧客の行動履歴に関するデータを何年分も蓄えているなら、活用できる可能性がある。十分に長い期間をかけてデータを収集していなかったり、分析を混乱させるノイズが多かったりする場合は注意が必要だ。
用途とデータの健全性を確認したら、AIOpsの導入をさらに先に進めるために下記のような取り組みを進める。
- データのタグ付け(分類)とデータカタログ(データ資産の目録)の作成
- イベントや相関関係に対する優先順位付け
- データ分析の専門家との協力
社内にデータ分析の専門的な人材がいない企業は幾つもある。そうした企業はスキルや知見をゼロから獲得するよりも、外部の専門家を探す方が早く、賢明だ。
正しくAIOpsに投資することで、顧客に対してより良いサービスを提供できるようになる。AIOps導入が成功すると、競合他社への優位性が確立し、運用コストは新たな価値に変わる。
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