「データドリブンな病院」はデータをこう活用している:医療機関で進む「データ活用」【前編】
質の高い医療の実現には、良質のデータが不可欠だ。より良いケアを患者に提供する上で、データはどのように役立つのか。医療グループのCommunity Health Networkの取り組みを基に検証する。
医療の現場で、データは常に重要な役割を果たしてきた。医師や他の医療専門家は、患者の病状を改善するために医用画像や患者情報を分析し、医療文献を参照する。近年では電子カルテ(EMR:電子医療記録)やIoT(モノのインターネット)といった技術の活用が進み、医療はますますデジタル化しつつある。
データを活用して事業を推進する「データドリブン」を徹底させている医療組織に、医療グループのCommunity Health Networkがある。同グループは社会的決定要因が健康に与える影響を考察するスクリーニング調査プログラムの一環として、データを活用している。
データ重視の医療グループが明かす「データ」の使い方
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Community Health Networkは予測モデルを構築するために、幾つかのデータを活用している。主要なデータは、医療機関がEMRシステムに記録した臨床データと、医療AI(人工知能)ベンダーのJvionが収集し公開する「健康の社会的決定要因」(健康に影響をもたらす社会的要因)に関するデータだ。Community Health Networkはこれらのデータを基に、医療機関で診療を受けることに問題を抱えている人、がん検診の受診が遅れている人といった、高リスク患者のペルソナ(患者像)を作成。加えて患者へのアウトリーチ(市民が医療サービスを受けられるよう働きかけること)の改善にも予測モデルを利用している。
患者が必要なときに、確実に医療サービスを利用できるようにすることは、医療機関共通の課題だ。ただしこうした医療アクセスの問題は「患者一人一人によって違う」とパトリック・マッギル氏は指摘する。マッギル氏は医師で、Community Health Networkのエグゼクティブバイスプレジデントと最高情報責任者(CIO)、最高分析責任者を兼任する。「全員に同じ方法を当てはめてもうまくいかない」(マッギル氏)ことから、同グループは診療予約のリマインダー送信の自動化に予測モデルを活用するなど、さまざまな解説策を模索している。
Community Health Networkは2021年の目標として、データリテラシーの向上とデジタルトランスフォーメーション(DX)を掲げる。すでに医療機関に向けて幾つかのデータ分析ツールを提供しており、中でも一番人気は「セルフサービスBI」(BI:ビジネスインテリジェンス)ツールだ。同グループはセルフサービスBIツールとして、Microsoftの「Power BI」を活用している。
「デスクトップPCでもスマートフォンでも、エンドユーザーが指先一つで全てのデータを可視化できるようにした」とマッギル氏は説明する。「業務フローの中には貴重なデータが詰まっている。こうしたデータから必要な物品の数量や将来の財務状況などを予測できる」(同氏)
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