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病院が「データ」活用時に見落としやすい“あの落とし穴”とは医療機関で進む「データ活用」【後編】

ツールの進化により、専門知識がないユーザーでもデータを活用しやすくなった。ただし使い方によっては、期待した効果が得られない可能性がある。医療機関がデータを活用する際の注意点を説明する。

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 専門的なスキルが必要だった作業を単純化し、誰でも使えるようにしたデータ分析ツールが登場している。具体的には利用時に、画面にテキストによる解説を表示するといった工夫を凝らしている。

 データ分析ツールが簡単に使えるようになった結果、ベンダーはデータ分析ツールを医療機関のIT部門だけでなく、事業部門に直接販売するようになる可能性がある。ただしデータ分析ツールは、人間による分析的思考の代わりにはならない点には注意が必要だ。データ分析を利用するときの知識や倫理観の重要性は今後も変わらない。

医療機関が見落としやすいデータ活用の“落とし穴”

 もう一つの注意点はデータの質だ。自然言語処理や機械学習などの人工知能(AI)技術を使ってデータを分析した結果は、入力データに依存する。例えば製薬業界は、ある薬を使用する可能性のある集団と比べて、臨床試験の参加者が多様性に欠けることが珍しくない。例えば白人男性が大半の割合を占める集団で観察した血圧降下剤の効果とリスクは、女性や有色人種を含むより広い集団には当てはまらない可能性がある。

 過去の製薬会社が臨床試験において、意図的に差別的な方針を採用していたわけではない。ただし男女間または白人と有色人種の間の経済的、社会的な状況の違いにより、一部の属性の人々が臨床試験に参加できなかった可能性がある。現在の製薬会社は、より多様な集団で薬の効果を観察できるよう、医療従事者と協力して臨床試験の被験者候補を見つける取り組みを進めている。

 「『教師なし学習』の場合、非常に強力な訓練データセットが必要だ」と、ビジネスコンサルティング会社West Monroe Partnersで医療とライフサイエンス分析部門を統括するスミトロ・サーカー氏は指摘する。教師なし学習は、例題とその答えを組み合わせた「教師データ」を利用しない機械学習の手法で、出力すべき結果が定まっていないことが特徴だ。「単なるモデルやアルゴリズムではないため、教師なし学習を使いこなすには知識が必要だ」とサーカー氏は指摘。まず組織全体にデータドリブンの文化を浸透させることが必要だとアドバイスする。

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