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コロナ禍で浮かび上がる「医療機関がデータを生かせない理由」医療のデータ分析が難しい理由【前編】

新型コロナウイルス感染症の危機に伴うサプライチェーンの崩壊によって、医療業界は物資不足に苦しんでいる。データ分析によって問題を解決できる可能性があるが、ハードルは小さくない。

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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)に際し、医療業界ではデータ分析が相対的に不足しているという事実が、さまざまな問題を引き起こしている。これは医学博士号を持つ医師、ライアン・マガリー氏の見解だ。データ分析が不十分なために、患者受け入れ態勢に不備が生じたり、COVID-19の治療方法を調整するのに難航したりという事態につながっている。

医療機関でデータが生かされない“根本的”な理由

 マガリー氏は、ロサンゼルス郡立ナーシング・アンド・アライドヘルス大学(College of Nursing and Allied Health)と南カリフォルニア大学ケック医学校(Keck School of Medicine of USC)が提携して運営する医療機関Los Angeles County + USC Medical Center(以下、LAC+USC Medical Center)の緊急治療室(ER)で勤務する。同氏はSAS Instituteが2020年6月16日にオンラインで実施した年次ユーザーカンファレンスに登壇し、SASでグローバルプロダクトマネジャーを務めるアリッサ・ファーレル氏と対談した。

 カンファレンスでマガリー氏は、医療業界におけるIT活用の必要性を訴えた。特に詳しく述べたのは「データ分析をどのように導入する必要があるか」「人工呼吸器や医療用マスクをはじめとする個人用保護具が逼迫(ひっぱく)する理由を誰かに説明するために、分析技術がどう関係しているか」といった話題だ。

 生理食塩水のような基本的な医療用品の不足を病院の責任者に伝えても「現状に合わせて治療を適宜調整してほしい」というメールが届く。こうした日常は、マガリー氏と同院の医師にとってCOVID-19が流行するよりも前から続いていたことだった。

 「私たち医療従事者は、感染症のパンデミックに対処する準備が整っているとは言い難い」とマガリー氏は語る。サプライチェーンによって物品が確実に支給されることは救命医療の質につながる。しかし現在はそのサプライチェーンが崩壊している。「医療従事者は不意打ちを食らっている状況だ。社会が前進するためにも、このことは特に強調したい」(同氏)

 サプライチェーン崩壊が引き起こした問題の一つに、COVID-19の検査をする上で欠かせない特殊な綿棒の不足が挙げられる。これは米国でCOVID-19が爆発的に拡大し始めた後に判明した問題だった。

 「ようやく検査が実施できるようになったときは胸をなでおろした」とマガリー氏は明かす。検査に必要な滅菌綿棒が不足する事態が起きると予測できた人はいなかっただろう。この綿棒を生産している工場の1つがどこにあるかご存じだろうか。COVID-19が世界中で最も猛威を振るっていた北イタリアだ。「私たちはホラー映画さながらの状況に置かれていた」(同氏)

 医療データは少なからずサイロ化されており、データ分析で利用しやすい状態になっていない。そのためアクセスして共有するのも簡単ではない。

 COVID-19の陽性者数、入院者数、死者数といった単純な患者データは周知されている。だが症状や有望な治療法、有望ではない治療法など、病院の垣根を越えて伝達され難い情報を共有するのは至難の業だ。

 医療業界が直面する問題は総じて、無秩序なデータと分析不足に起因する。「こうした問題を簡単に解決できる方法はない」とマガリー氏は言う。

 「医療従事者と患者の生活を改善してくれる人がいるとするなら、それはIT企業の人々だ」とマガリー氏は語る。「彼らのおかげで、社会はさまざまなことを能率化して改善できる段階に到達している」(同氏)


 後編は、COVID-19問題の早期解決に向けてSASがどのような取り組みをしているかを紹介する。

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