仮想マシン(VM)の「固定費」「変動費」とは? 総コスト見積もりの第一歩:「VM」のコストを算出する方法【第1回】
VMを稼働させる際には、そのために生じるコストの見積もりが必要だ。VMのコストを適切に評価するための計算方法を説明する。
仮想マシン(VM)を動かすのにかかるコストを算出しようとすると、複雑な計算が必要になる可能性がある。算出には、コンピューティングのコストに関する知識やコンピューティングに必要な容量の計算、予想使用量の把握が必要になる。
インフラの導入コストの分析は、導入先の事業部門に委ねる方がよいと考えるIT担当者もいる。とはいえ基本的なコスト算出をするのに必要な技術的な要素を、全て把握しているのはIT担当者だ。VMにかかるコストを計算するときにIT担当者が考慮すべき要素と、コスト計算の基本的な方法を説明する。
VMの「固定費」と「変動費」を計算する
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VMのコストの見積もりは、仮想サーバの構築に関連する固定費と変動費の合計を計算することから始めなければならない。例えば固定費には、以下の要素が挙げられる。
- 物理サーバ
- 物理ストレージ
- VMwareの「vSphere」などのサーバ仮想化ソフトウェアのライセンス
- Microsoftの「Windows Server 2019」などのサーバOSのライセンス
- VMwareの「vCenter Server」などの管理ソフトウェア
変動費には、ネットワーク通信料金やストレージ接続料金に加えて、OSや管理ソフトウェア、ハードウェアの保守サポート料金などのコストが含まれる。このリストを基に、社内のVMで利用する製品やサービスを固定費と変動費に整理する。
判明した変動費に、物理サーバの想定ライフサイクルを乗算する。例えば物理サーバのライフサイクルを3年間と想定したとする。この場合、物理サーバのハードウェアとソフトウェアを3年間運用したら、その用途を変えるか、廃棄することになる。サーバの固定費1万ドルは、3年間変わらない。ただし物理サーバ1台につきネットワーク接続料金が年間500ドルかかる場合、3年間で1500ドルになる。物理サーバと一緒に利用するデータベース管理システムのコストが年間2000ドルだとすると、3年間で6000ドルになる。各社の事業計画やニーズによって、このライフサイクルは長くなったり、短くなったりすることがある。
物理サーバ1台当たりのライフサイクル全体でかかるコストが分かったら、それに関係する物理サーバの総数を乗算する。これにより、VMを稼働させるための総コストが求められる。
以下の表は、10台の物理サーバで構成されたインフラの単純な例を示している。このインフラは、Hewlett Packard Enterpriseの大型ストレージアレイで512TBの「HPE 3PAR StoreServ 9000 Storage」1台を備えている。実際のコストは、選択する製品や、ベンダー各社が拡張する特定の条件によって、大きく変わる可能性がある。
コスト項目 | 1回限りのコスト | 変動費 | ライフサイクル(3年間) | 物理サーバ10台の総額 |
---|---|---|---|---|
物理サーバ | 1万4000ドル | - | 1万4000ドル | 14万ドル |
ストレージアレイ(512TB) | 2万ドル | - | 2万ドル | 2万ドル |
ハイパーバイザー(CPU1基当たり) | 4000ドル | - | 4000ドル | 4万ドル |
ハイパーバイザーの保守サポート | - | 1000ドル | 3000ドル | 3万ドル |
OS | 6000ドル | - | 6000ドル | 6万ドル |
物理サーバの保守サポート | - | 1000ドル | 3000ドル | 3万ドル |
ネットワーク接続 | - | 500ドル | 1500ドル | 1万5000ドル |
管理ソフトウェア | 1万ドル | - | 1万ドル | 1万ドル |
管理ソフトウェアの保守サポート | - | 2000ドル | 6000ドル | 6000ドル |
総額 | 35万1000ドル |
次回は、VMを動かすのに必要となるデータセンターのリソース量を計算する。
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