「ワクチン接種義務化」が雇用にもたらす“負の影響”とは?:ワクチン義務化で離職を恐れる米国企業【後編】
米国の一部州で始まっているワクチン接種義務化が米国全土に広がることで、雇用にはどのような悪影響が生じる可能性があるのか。米国の取り組みを紹介する。
前編「『ワクチン接種義務化』が医療従事者の離職を招く?」は、米国ニューヨーク州におけるワクチン接種義務化が、医療業界の雇用に及ぼす影響について紹介した。ワクチン接種の義務化は、それを望まない従業員の離職を後押しする懸念があり、米国全土で議論が沸騰している。後編は、ワクチン接種の義務化が離職率に与える負の影響を考察する。
ワクチン接種義務化がもたらす負の影響
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ワクチン接種の義務化が離職率に与える負の影響を見積もるのは容易ではない。例えばコネチカット州は2021年9月に、スクールバスの運転手に対するワクチン接種を義務化した。ワクチン接種と、その代替案である毎週の検査を拒否したドライバーは200〜300人に上るという報道もある。
「義務化が始まった日にはスクールバスの一部のルートで幾つかの問題があったものの、対処可能なものだった」。コネチカット公立学校長協会(CAPSS:Connecticut Association of Public School Superintendents)の事務局長を務めるフランシス・ラビノビッツ氏はこう振り返る。
ラビノビッツ氏は「最優先すべきは生徒の安全だ」と話す。同氏によれば「一部のバス会社からは猶予期間を設ける措置の要請があったようだが、州知事はワクチン接種義務化の延期には応じなかった」と、この対処を肯定的に受け止めている。
一方、企業の人事部に所属する管理職は離職に歯止めをかけるために金銭的なインセンティブや昇給、着任賞与という手段を用いている。雇用拡大や離職防止策を講じている企業の一例として、航空会社Southwest Airlinesの事例を紹介する。同社で採用マーケティングのチームリードを務めるケルビー・タンジー氏は、人事(HR)業務を技術で改善する「HR Tech」の新興ベンダーPhenom Peopleが2021年9月21〜24日に開催したオンラインカンファレンス「IAMHR 2021」に登壇し、「労働市場は非常に厳しい」と語った。
Southwest Airlinesは転職を希望する候補者数を拡大しようとしている。同社はリファラル採用(従業員による人材紹介)制度を設けており、最近この制度にインセンティブを追加した。リファラル採用のインセンティブプログラムには、Phenom Peopleの人事管理ツール「Phenom Internal Mobility」を使用している。
求職者を紹介した従業員にはギフトカードや、福利厚生ポイントプログラム「Southwest Airlines Gratitude」(SWAG)を通して家族や友人との旅行に使用できるポイントが付与される。Southwest Airlinesでは、このインセンティブプログラムが功を奏している。それまで従業員による紹介件数は1週間当たり125件だったのが、インセンティブを追加して以来1000件に増えたという。
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