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「『App Store』が嫌なら使うな」は見当違い “大き過ぎるApple”の深い問題Apple「App Store」の“光と影”【第4回】

Appleは「App Store」を構築し、維持するために多大なコストをかけてきた。App Storeを使うのであれば、相応の負担を負うべきだ――。こうした主張は一理ある。ただし潜んでいる問題はもっと根深い。

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 「Appleは『App Store』の品質や安全性、利便性を保証するために、コストを負担している」。調査会社Constellation Researchの創業者でプリンシパルアナリストのレイ・ワン氏はこう説明する。Appleの公式アプリケーションストアであるApp Storeを利用したいと望む一方で、出店するための料金は支払いたくないというEpic GamesやSpotifyの主張は「『自分の商品をスーパーマーケットで手数料なしで売りたい』というようなものだ」とワン氏は語る。「料金を払わずにApp Storeを使用することはできない」(同氏)

それでも残る“大き過ぎるApple”問題

 調査会社Forrester Researchのプリンシパルアナリスト、ジュリー・アスク氏もAppleのApp Store側に立つ。2021年4月のブログエントリ(以下)でアスク氏は、App Storeのビジネスモデルがもたらした利点を解説した。

私たちの多くは、携帯電話会社が私たちの携帯電話利用を支配していた時代を覚えている。最上階のスペースを確保するどころか、携帯電話会社と取引するためのコストを負担できる開発者は、もしいたとしても数えるほどだった。スティーブ・ジョブズ氏は新しく、かつもっとずっと開発者に開かれたモデルを生み出す構想を描いた

 新しいビジネスモデルの創出は「安上がりにはできなかった」とアスク氏は指摘する。Appleは2008年以来、何億ドルもかけてApp Storeを構築し、消費者が安全とプライバシーを守りながらアプリケーションを選んでダウンロードできるようにした。開発者には支援ツールを提供し、OSの更新や向上も続けており、それらには当然ながらコストがかかっている。

 「確かにルールは存在する。ただしAppleが作り出したルールが気に入らなければ、はるかに大きな代替手段も存在する」とアスク氏は語る。「Appleには、自分たちが築き上げたブランドと製品を守る権利があるはずだ」(同氏)

 Appleは安全なシステムを生み出した一方で、「法外な手数料のために、そのメリットが薄れ始めている」と、ボストン大学(Boston University)の経営大学院であるQuestrom School of Businessのマーシャル・ファン・オルスタイン教授は主張する。「Appleが課している“税”は、その付加価値に対して不釣り合いだ」とファン・オルスタイン氏は指摘。「自らが何の役割も果たしていないサブスクリプション収入に対して課すべきではない」と主張する。

 2021年4月、Appleは欧州連合(EU)の欧州委員会から警告を受けた。App Storeにおいて独占的な地位を乱用した疑いによる。ファン・オルスタイン氏は、今回の警告がAppleの慣行を変えさせることを期待している。

 調査会社Deep Analysisの創業者アラン・ペルスシャープ氏によると、EUのAppleに対する警告は、規制当局が大手IT企業の具体的なビジネス慣行を精査している実例だ。買収慣行やデータポリシーに対する大まかな警告ではなく、具体的な警告であれば、Appleをはじめとする強大なIT企業にとっては防戦が難しくなる。

 EUと米国の両方の規制当局が照準を絞った形で大手IT企業を攻撃し続ければ、何らかの結果は出る公算が大きい。ただし当局が大手IT企業に対する規制や抑制を推し進めようとする狙いは、反競争的な行為を是正することよりも、「大きくなり過ぎて『自分たちにルールは当てはまらない』と考えるようになった企業をコントロールすることにある」とペルスシャープ氏はみる。「現時点でAppleらは、外部の相手がノックアウトできないほど巨大化してしまった」(同氏)

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