「HoloLens 2」が“うっかりミス”防止に役立つ理由と、漏れる“不満”の声:コロナ禍で人命を救った「HoloLens 2」【後編】
製造業をはじめ、さまざまな企業がMicrosoftの「HoloLens 2」を活用して業務効率の向上を図っている。一方でHoloLens 2の企業利用には幾つかの課題がある。それは何なのか。
さまざまな分野でMicrosoftのMR(複合現実)デバイス「HoloLens 2」の活用が広がっている。医療にフォーカスした中編「『HoloLens 2』を使った“医師の卵”の育て方とは?」に続き、後編となる本稿は製造業での活用事例と、企業利用の課題に焦点を当てる。
“うっかりミス”軽減に効果の「HoloLens 2」 思わぬ“不満の声”も
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仕事場でAR技術の活用が広がっている
近年、AR(拡張現実)やMRの技術を使ったヘッドマウントディスプレイ(HMD)型デバイスが相次いで登場している。そうした中、HoloLens 2が他社製品と比べ強みとしているのは、「CAD」(コンピュータ支援設計)の3次元(3D)映像を表示できる機能だと専門家はみる。
トヨタ自動車はHoloLens 2を使い、修理技術者がエンジンや車軸を3D映像として、実際の車の外装に重ね合わせて見ることができるようにしている。同社はHoloLens 2を約100台導入。修理作業の効率化を図る他、実務経験の少ない従業員によるミスの削減を狙う。水ビジネスのEcolabは政府機関や民間企業に水質監視用の大型装置を提案する際、担当者はHoloLens 2によってその装置の3D映像を表示し、回転させながら最適な設置場所を決める。
HoloLens 2は活用が広がるとともに、比較的新しい技術ということもあり、エンドユーザーからは使い勝手について不満の声もある。そもそもHoloLens 2は無線LAN接続を必要としているため、無線LANが使える場所でしか使えない。英国の医療機関グループ、Blackpool Teaching Hospitalsでは遠隔臨床観察の際、学生にはHoloLens 2を装着している医師の声のみが聞こえ、診察対象の患者の声は聞こえないという不具合が生じたという。
導入の最大のネックは、コストがかさむことだ。小規模企業はともかく、資金力のある大企業もHoloLens 2をどのように利用すれば導入コストを回収できるかを明確にする必要がある。とはいえHoloLens 2はさまざまな業種で注目が高まり、将来はさらに幅広く採用される可能性がある。旺盛なニーズを背景にMicrosoftも市場開拓に動き、「HoloLens 2の価格は今後2年間、大幅に下がる」と、調査会社OnConvergenceのアナリストを務めるトム・ブラネン氏はみる。
前編「航空機エンジニアの“『人工呼吸器』職人化”に『HoloLens 2』はどう貢献したか」の通り、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)で英国の医療機関が人工呼吸器の不足に直面した際、人工呼吸器の迅速な配備にHoloLens 2が役立った。そう考えると、HoloLens 2は時間とコストにとどまらず、英国では人命も救ったことになる。
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