コーヒーの抽出過程を「デジタルツイン」で再現するために足りなかったもの:老舗メーカーの「デジタルツイン」活用事例【中編】
「デジタルツイン」をコーヒーマシン開発に導入したGruppo Cimbali。さまざまな先端技術を活用してきた同社にとっても、デジタルツインの構築は簡単には進まなかった。どう実現したのか。
「デジタルツイン」は現実の物体や物理現象を、データによってモデル化する。イタリアのコーヒーマシンメーカーGruppo Cimbaliは、この技術をコーヒーマシンの開発に取り入れた。同社はコーヒーマシンに関するさまざまなデータを蓄積してきたが、デジタルツインの構築は容易ではなかった。特に重要だったのはシミュレーションだ。具体的に、同社はどのようなツールと手法を使ったのか。
「デジタルツイン」構築には何が必要だったのか
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Gruppo Cimbaliは、Altair Engineeringのシミュレーションソフトウェア「Altair Activate」をデジタルツイン開発に活用した。Gruppo Cimbaliは遠隔でコーヒーマシンの稼働状況を計測することや、IoT(モノのインターネット)のネットワークを介したデータ収集は、以前から実施していた。ただしそれだけでデジタルツインは実現しなかった。Gruppo Cimbaliを支援したAltair Engineeringのビジネス開発マネジャー、クリスチャン・ケーラー氏は「シミュレーション工程に不足があった」と述べる。
機械部品の設計においては、Gruppo Cimbaliは以前からソフトウェアによるシミュレーションを取り入れていた。だがコーヒーマシンを完全に再現するために必要な熱伝導や水圧など、機械部品以外の要素のシミュレーションは実施できていなかった。「デジタルツインによるシミュレーションには、熱力学や電気を含む複数の物理現象の評価が必要だった」とケーラー氏は説明する。
コーヒーマシンに関する物理現象は複雑だ。良いコーヒーを作るには水圧と温度のバランスを適切にする必要がある。そのためにはコーヒーマシンの機械部品間の熱交換を制御するための精密な設計が求められる。「1日に600杯のコーヒーを作る場合、1杯目から600杯目まで常に同じ品質でなければならない」とトゥルシーニ氏は語る。
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