「パンデミックが多様性を妨げた」が3割 その理由と解決策は:調査からに見るD&Iとパンデミック【後編】
テレワークの普及がD&Iを後押しする一方で、パンデミックに伴う投資の縮小でD&I施策に悪影響が出ていることを懸念する企業もある。調査レポートを基に、IT業界におけるD&Iの現状と将来展望について考察する。
前編「『人材多様性の欠如』が英国でも問題視 テレワークはD&Iの追い風になるか」に続き後編となる本稿も、Intelが2021年9月に実施した調査を基に、IT業界のダイバーシティー&インクルージョン(D&I:人材の多様性を広げ、それを受容する文化を形成すること)の問題を取り上げる。この調査を基にしたレポート「The Future of Inclusion in an Evolving Workplace」によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の影響で企業のテレワーク導入が進み、結果としてD&Iの取り組みも進む傾向にあった。調査対象は、世界の企業の意思決定者または、DEI(Diversity, Equity and Inclusion:多様性、公平性、包括性)ポリシーの策定に影響力のある従業員3136人。
D&I課題の優先事項は
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Intel調査によると、D&I課題の中でも解決を優先する事項として上位を占めた回答は「ジェンダーとエスニシティーにおける多様性の欠如」だった。回答者の47%は「女性の雇用増加」を最優先事項だと回答。39%は社内における「民族多様性の欠如」に取り組むことを重視していると答えた。「障害およびアクセシビリティーの問題を抱える人々に対する施策の強化」も、回答者の37%が念頭に置いている。
比較的注目度が低い項目もある。例えば解決すべき課題として「セクシュアリティの多様性不足」を挙げた回答者は27%にとどまった。ただし国によって割合は異なり、イスラエルでは43%、英国では35%の回答者が関心を持っている。
D&Iを促進する方法として、回答者の37%が「業界全体での協働を望む」と答えた。同様に37%が「D&Iに関する業界標準や国際的なベンチマークの制定」が有効だと考えている。
パンデミックがD&I施策に及ぼした悪影響
全ての企業がパンデミックの間、D&I施策にポジティブな影響を感じていたわけではない。回答者の28%はパンデミックが自社のD&I関連施策の推進にマイナスの影響をもたらしたと答えた。理由の一つは投資の漸減だ。企業は概して、財務面への影響を抑えるためにパンデミック初期に支出を削減している。これが人材採用やIT投資をはじめ複数の事業運営に影響を及ぼした。
パンデミックでD&Iの取り組みにマイナス影響があったと答えた回答者のうち、38%は「女性が最も大きな影響を受けた」と答えた。一般的に女性は育児の大半を担っていたり、接客業のようにパンデミックの影響を強く受けた業種で働いていたりするためだ。
調査レポートによると、回答者の20%が「オフィスワーカーとテレワーカーの双方に対してインクルージョンを保証すること」が2022年の優先事項だと答えている。オフィスワークとテレワークを組み合わせたハイブリッドワークが主流になりつつある時代において、D&Iは以前よりも重要な取り組みになる。この取り組みの一例には、従業員の勤務形態に関係なく昇進の機会を均等に提供するといった施策がある。
D&Iの目標を設定している企業に属する回答者の64%が、「2023年までに目標を達成したい」と答えた。一方でその3分の1は目標達成のための準備が整っているかどうかを疑問視しており、目標達成にはさらなる投資が必要であることが伺える。
17%の回答者は、D&I推進にITを活用することを考えている。同様に回答者の89%は「D&I施策の進捗(しんちょく)状況の管理にITを活用するとより目標を達成しやすい」と答えた。回答者の29%は「企業はD&Iに対して『デジタルファースト』のアプローチを取るべきだ」と回答。44%は「D&Iの推進に役立つ革新的な技術の利用が『重要』」だと考えている。
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