「“明らかな悪”を全力で調べる」だけのセキュリティ対策はもうやめよう:“常識”から見直すセキュリティ対策【前編】
アジア太平洋地域(APAC)の企業はサイバー攻撃への備えが万全とは言えないと、セキュリティの専門家は指摘する。その一因は、APAC企業が当然のように進めてきたセキュリティ対策そのものにあるという。
あるサイバー攻撃者は約6カ月間、APAC(アジア太平洋地域)のある企業のLANに潜入した後、ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)攻撃を仕掛けた。攻撃が発覚したのは2021年10月のことだった。
この企業は、ランサムウェア攻撃が実行される前の潜伏期間中に、攻撃兆候を複数確認していた。しかし残念なことに、ランサムウェア攻撃を防ぐための人材、プロセス、技術を有しておらず、標的システムがオフラインになってから初めて、攻撃を発見した。
APAC企業がやりがちなセキュリティ対策に“穴”あり
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セキュリティベンダーCrowdStrikeのAPJ(アジア太平洋・日本地域)サービスディレクターであるマーク・ガウディー氏は、この事件が「APAC企業がランサムウェア攻撃に対処するための準備ができていないことを示す一例だ」と語る。
ガウディー氏は、APAC企業では「脅威の可視化」が重要な問題だと指摘する。同氏によると、APAC企業はサイバー脅威を見極めるため、いまだにマルウェアなど「具体的かつ明確な悪事」の調査を基本としたセキュリティツールに頼っているのが実情だ。
「そのようなツールを使う代わりに、ネットワークに潜む脅威の兆候を探したり、振る舞いベースの脅威モデルを活用した、潜在的な脅威の可視化を実施したりする必要がある」とガウディー氏は助言する。そのためにはログを徹底的に調査し、認証情報の詐取「クレデンシャルダンピング」をはじめとする不正行為の兆候を特定して、得た情報に基づいて行動することが不可欠だという。
ガウディー氏は「良い成果を上げるためには、トレーニングされた人材と適切なプロセスが必要だ」と指摘する。「これらは重要な要素であるものの、たいていの企業に欠けている」(同氏)
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