ただの流行語ではなくなった「AIOps」 なぜ導入が進み始めたのか?:静かに現実味を帯びる「AIOps」【前編】
機械学習とIT運用を組み合わせるAIOpsは派手に宣伝されることがなくなり、導入期に突入した。この動きに影響を与えたのは、パンデミックとクラウドサービスの利用拡大だ。
企業のIT運用は機械学習アルゴリズムによって変わり始めている。システム稼働の問題をほとんど全て自律的に解決する「自己修復システム」とまではいかなくても、IT運用を部分的にでも自動化する動きは着実に広がりつつある。
「AIOps」(AI for IT Operations)という用語が頻繁に登場するようになったのは2018年ごろのことで、一気にIT業界の流行語になった。人工知能(AI)技術で駆動する未来について、さまざまな臆測が飛び交った。人手による介入を排除する「NoOps」という概念を打ち出し、完全自己修復型システムの世界を描いてみせたAIOpsベンダーもある。
そこを襲ったのが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)だ。企業のIT支出計画はひっくり返り、NoOpsなどの未来を変えるアイデアには注目が集まりにくくなった。それよりもデジタルトランスフォーメーション(DX)が企業にとっての差し迫ったニーズとして浮上し、より手軽にシステムを利用できるクラウドサービス利用に勢いが付いた。
現実味を帯びるAIOps 何がきっかけになったのか?
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こうして2018年から2022年までの動きを振り返ると、パンデミックとクラウドサービス利用によって、AIOpsの必要性はなくなったかのようだが、実はその反対だ。クラウドサービス利用によって、さまざまな監視すべきデータが発生するようになり、それと同時に新しい監視ツールが登場した。クラウドサービス移行でシステムが複雑化した上に、パンデミックの直撃でIT予算は減少し、企業のIT部門はスタッフ不足に悩むようになった。これらを受けて、機械学習アルゴリズムを使ったAIOpsの必要性が一段と高まる結果になった。
調査会社Gartnerでアナリストを務めるアルン・チャンドラセカラン氏は、「新しいアプリケーションは根本的に異なる仕組みを採用している場合もあるため、以前と同じ監視方法では不十分だ」と語る。受動的な監視ではなく、予測型の監視に移行するトレンドも生まれているという。
AIOpsを支える技術が多様化してきたことも、システム運用方法の移行を後押しする。例えば時系列データベース(ミリ秒など細かい単位で情報を蓄積するデータベース)とオープンソースの並列処理エンジンによって、企業はより多くの計測値や機械データを収集できるようになった。それと同時に、大量のデータを処理するための技術も多様化している。「目的に応じて機械学習をすることで、高い価値を引き出せる状況が整ってきた」(チャンドラセカラン氏)
ITベンダーがAIOpsについて派手に宣伝する傾向は、ここのところ収まってきた。それはAIOpsへの注目度が下がったのではなく、AIOpsが実用化の段階に入ったということだ。
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