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「気候変動で果実が不作」の謎をデータで解明するFruitWatchとは? 大学が挑戦一般参加者が果樹の開花情報を投稿

英国のレディング大学がOracleと開始したプロジェクト「FruitWatch」は、気候変動が果実の生産に影響を及ぼす仕組みを明らかにしようとしている。その具体的な内容は。

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 英国University of Reading(レディング大学)は2022年2月、Oracleとの共同プロジェクト「FruitWatch」の情報を公開した。FruitWatchは、気候変動が果樹の受粉に与える影響を調べるために、英国全土の果樹の開花時期を調べるプロジェクトだ。

一般参加者から開花情報を収集――研究の気になる中身は

 気候変動の影響により、受粉を助ける昆虫や鳥といった動物が最も盛んに活動する時期よりも、果樹の開花時期が早くなっているのではないか――。こうした仮説の下、FruitWatchは庭園、市民菜園、果樹園、公園にある果樹の開花時期に関するデータを収集し、検証している。

 検証の結果「気候変動の影響がある」と判明した場合は、深刻な影響を防ぐための対策が必要になる。気候変動が果樹の開花時期に影響を及ぼしていれば、授粉が減り、果実の生産量が減少する恐れがあるからだ。

 データ収集には、一般参加者の力を借りる。一般参加者は自身が目にした果樹の開花状況を、FruitWatchの公式Webサイトに投稿する。同WebサイトはOracleが今回のプロジェクトのために構築した。調査対象となる果樹は、サクランボ、リンゴ、西洋ナシ、プラムの果樹だ。

 レディング大学でFruitWatchを主導するクリス・ウェイバー氏は、「できるだけ多くの目で、できる限りたくさんの果樹を観察し、果樹の授粉に気候変動が影響しているかどうかを教えてほしい」と一般参加者の協力を訴える。一般参加者が開花や受粉を観察する場所は、「『イングランドの庭園』と呼ばれるケント州でも、ロンドン中心部でも、スコットランド北部でも構わない」(同氏)。

 FruitWatchのプロジェクトチームは、一般参加者が投稿したデータをデジタル地図にマッピングする。受粉を媒介する動物の英国全土での動きと、開花情報を対比しながら、気候変動が開花時期にどのような影響を与えているかを分析する。地域によっての開花状況の違いも図示する。

 OracleによるとFruitWatchは、同社が参加しているミツバチに関する研究プロジェクト「World Bee Project」に続くものだ。World Bee Projectは、Oracleのクラウドストレージと、人工知能(AI)技術を活用した分析ツールを利用して、世界中のミツバチについて調べている。

 これらのプロジェクトは、「Oracle for Research」の一環だ。Oracle for ResearchはOracleのベンチャー事業で、同社のクラウドサービス「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)を学術研究者の間に広げることを目的にしている。

 FruitWatchは、博士課程の学生を訓練することで世界の食料安全保障問題に取り組むコンソーシアムWaitrose Collaborative Training Partnershipからも資金提供を受けている。

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