「スマートNIC」入門 CPUに代わる「DPU」「IPU」で理解する:スマートNICによるプロセッサの負荷分散【第1回】
プロセッサ分野ではCPUからGPUへの分業が進むだけではなく、プロセッサを搭載する「スマートNIC」の活用が進む兆しが見えている。CPU代替のプロセッサが台頭する理由や、スマートNICの理解に不可欠なポイントは。
NIC(ネットワークインタフェースカード)の帯域幅はかつての10Mbpsから100Gbps、400Gbpsへと拡大し、サーバの通信速度を高速化させてきた。その進化系として「スマートNIC」が登場した。スマートNICはCPUの役割を肩代わりするプロセッサを搭載する。
CPUの役割が多様化しその負担が大きくなる中、その課題を解消するハードウェアとしてスマートNICや、CPUに代わるプロセッサの利用が広がる可能性がある。まず強調しておくべき点は、スマートNICは単なるNICではないことだ。
「スマートNIC」の重要な役割とは? 台頭する「DPU」「IPU」で理解する
一般的に、スマートNICはストレージやネットワーク、セキュリティに関する処理をCPUからオフロードする。CPUの負荷はその分軽くなり、CPUは重要な仕事に専念できるようになる。スマートNICの代表的な用途としては、
- パケットキャプチャー(分析を目的とした通信データ採取)
- ネットワークの管理・可視化
- テレメトリー(システム稼働データの収集と監視)
などがある。
コストとメリットのトレードオフが、スマートNIC利用時の基本だ。CPUを重要な仕事に集中させるためにスマートNICのメリットを最大限引き出したいのであれば、その分コストは高くなる可能性がある。
近年は通信データの処理に特化した新しいプロセッサが台頭した。それはスマートNICのプロセッサであり、スマートNICの登場と切り離せない関係にある。そのプロセッサを、CPUベンダーは
- DPU(データ処理装置)
- IPU(インフラ処理装置)
などと呼んでいる。汎用(はんよう)の演算処理をCPUが担い、高負荷の演算処理をGPU(グラフィックス処理装置)が担うのと同じように、プロセッサ分野の分業が進んでいるのだ。
スマートNICの選択
データセンターにスマートNICを導入する際は、製品のメリットを吟味して選定する必要がある。スマートNICは製品によって機能や帯域幅、価格が大きく異なるためだ。CPUのオフロードしたい仕事や、利用するアプリケーションの特性を踏まえて適切なスマートNICを選択しよう。さまざまな用途や活用法を想定した新世代のスマートNICが登場している。例えば以下の通りだ。
- OEM(相手先ブランド製造)ベンダーなど、各種ハードウェアを統合して提供する事業者向けのスマートNIC
- ネットワークやセキュリティの特定機能を迅速に導入できる、プログラムの書き換え可能な集積回路「FPGA」(Field Programmable Gate Array)搭載のスマートNIC
- 企業やクラウドサービス事業者のデータセンターにおけるストレージ、ネットワーク、セキュリティの処理を担うDPU搭載のスマートNIC
第2回以降は、スマートNICのベンダー3社の製品をそれぞれ具体的に紹介する。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.