「“補償のない”サイバー保険」に加入する意味はあるのか:調査で見る自治体のセキュリティ対策【後編】
サイバー攻撃による被害のリスクを抑えたいと考える企業にとって有力な選択肢となるのが「サイバー保険」だ。一方で、企業はサイバー保険への加入をためらい始めている。なぜなのか。
「サイバー攻撃による最悪の事態が起きた時の計画を立てておくことが重要だ」。そう語るのは、保険仲介およびリスクコンサルティング会社Arthur J. Gallagher & Co.(以下、Gallagher)で政府、住宅、教育、公共部門担当のマネージングディレクターを務めるティム・デバイン氏だ。
攻撃による損失への備えとして、候補の一つになるのがサイバー保険だ。しかし、企業は「サイバー保険に加入することが難しくなっている」と考える傾向にある。
「ますます困難になる」サイバー保険への加入
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サイバー攻撃を受けた場合、企業にはコスト負担や風評被害のリスクが生じるため、そういったリスクを軽減するためにサイバー保険へ加入することは重要な検討事項となる。攻撃自体のリスクを軽減したい企業は、サイバー保険以外の手段についても検討する必要がある。
一方で、企業はサイバー保険への加入が難しくなっていると感じている。その主な理由は以下の通りだ。
- 保険料の高騰
- 保険条項で規定された、加入者に求められるリスクやコンプライアンス要件の厳格化
ロンドンを拠点とする保険市場Lloyd’s of Londonは2022年8月、保険商品の引き受けおよび運用を担う引受保険会社に対し、2023年3月末以降、国家が支援するサイバー攻撃を補償対象から除外するよう呼び掛けた。この目的は、サイバー攻撃の被害組織に対する補償を、保険市場が賄い切れなくなるリスクを低減することだ。Lloyd’s of Londonは企業に対し、国家が関与するサイバー攻撃の手口が複雑であることを認識して、デューデリジェンス(適正評価)を実施するよう奨励している。
セキュリティベンダーのTier-3 Pty(Huntsman Securityの名称で事業展開)は、2022年8月にサイバー保険に関する調査結果を公表した。それによると、保険に加入する金銭的余裕がなかったり、保険への加入を拒否されたり、著しい補償範囲の制限をかけられたりする組織の数は、2022年から2023年末にかけて倍増する見込みだという。
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