“AI絵師”は「存在してはいけない」のか?:画像生成AIは“クリエイティブな泥棒”か【第1回】
画像生成に特化したAIモデルが急速に進化し、目を見張る出来栄えの画像が次々と生まれている。その流れを受けて、アート作品の本質とは何かという議論が白熱している。人々が懸念する問題とは。
人工知能(AI)技術で生成したアート作品(以下、AIアート)は、経験豊かなアーティストと一般人の両方にとっての新しい道を描き出す。一方で、AIアートが実在の人間の知的財産を盗んでいるとの批判もある。
AIアート生成サービス「Midjourney」、オープンソースの画像生成用AIモデル「DALL・E」などのおかげで、素人でもオリジナル作品に見える、見栄えの良い画像を簡単に作成可能になった。これをきっかけに、アート作品の本質とは何か、AI技術がアーティストやイラストレーターの仕事を駆逐するかどうかに関する白熱した論議が交わされている。
あのスティーブン・キング氏も“AI絵師”に
この論議に加わったのが、著名SF(サイエンスフィクション)作家のスティーブン・キング氏だ。キング氏は「AI技術で制作した」と主張する「自転車に乗ったペニーワイズ(キング氏の小説に登場する殺人ピエロ)」の画像を、短文投稿サイト「Twitter」における自身のアカウントに投稿した。どのAIモデルによって、この画像を生成したのかは不明だ。
キング氏が投稿した画像の右下には、署名のような不自然な模様があった。この模様は、画像を生成したのがAIモデルであり、その教師データがインターネットに公開されているアート作品であることを示唆している。インターネットで公開中のアート作品には、作者が署名を入れている場合があり、この模様はそれを模した画像をAIモデルが生成したことを意味する。
「AIアートはアーティストの権利を侵害しているのではないか」――。AIアートを巡って、こうした批判の声が上がっている。騒ぎがあまりに大きくなり、一部の画像配信サービスはAIアートを削除し始めた。Webサイト「Have I Been Trained?」では、自分のアート作品が「LAION-5B」に含まれていないかどうかをアーティストがチェックできるようにした。LAION-5Bは、「Stable Diffusion」「Imagen」といった、文字列を画像に変換するAIモデルのトレーニングに使われているデータセットだ。
文字列から画像を生成するAI技術の活用対象が、動画編集分野に及ぶことを懸念する声がある。ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)「Facebook」を運営するMeta Platformsは、2022年9月に文字列から動画を生成するツール「Make-A-Video」を発表した。
第2回は、画像生成AIモデルの進化がアーティストに及ぼす影響を探る。
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