「5G」「ノーコード/ローコード開発」への“期待と懸念” マッキンゼーが調査:コンサルが注目する技術トレンド【後編】
McKinseyのレポートは、ビジネスに変革をもたらす技術について取り上げている。企業における「5G」や「ノーコード/ローコード開発」といった先進的な技術導入が進むためには、何が必要なのか。
コンサルティング会社McKinsey & Companyは、主要な技術トレンドを取り上げて紹介したレポート「Technology Trends Outlook 2022」を2022年8月に公開した。この調査は、同社内外の70人以上の著名な科学者や起業家、研究者により構成されるチームMcKinsey Technology Councilと、同社のパートナー諸氏が実施した調査を基にしている。
本稿はそのうち以下2つの技術について、企業への導入により期待される効果と、導入が進むために今後必要なことについて紹介する。
- 「5G」(第5世代移動通信システム)や無線LAN規格「Wi-Fi 6」といった先進的なネットワーク接続
- 非技術系の従業員がアプリケーションを作成できるよう支援する、ノーコード(コード記述なし)およびローコード(最小限のコード記述)の開発技術を取り入れた次世代ソフトウェア開発
McKinseyが注目する2つの技術 「採用の阻害要因」は?
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技術を用いたビジネス変革事例
レポートの技術トレンド分析では、以下のような指標を用いて技術の成長率を導き出している。
- 特許出願
- 出版物
- ニュースによる言及
- オンライン検索のトレンド
- 民間投資額
- 投資企業数
McKinseyが注目する技術の一つが、5GやWi-Fi 6といった先進的なネットワーク技術だ。レポートによると、新しい通信プロトコルの登場や帯域幅(通信路容量)の拡大により、交通や医療、製造といった業界での生産性やユーザーエクスペリエンス(UX)の向上につながる可能性がある。
企業は移動通信や無線LANの次世代規格は迅速に採用する傾向にあるが、以下のような新しい通信技術はまだ十分に普及していないとレポートは指摘している。
- 地球低軌道(LEO)衛星通信
- 5Gをプライベートネットワークとして使う「プライベート5G」
McKinseyは、次のような事項を今後の課題として挙げている。
- 5GやLEO衛星通信といった通信技術を利用するネットワークへの設備投資を増やすこと
- 低消費電力で広域の無線通信を可能にするネットワーク「LPWA」(Low Power Wide AreaLPWA)やLEO衛星通信などのビジネスエコシステム(協業や分業などの協力体制)を構築すること
- 新しい通信技術を活用するためのビジネスモデルを通信事業者が見つけること
McKinseyはローコード開発およびノーコード開発を取り入れた次世代ソフトウェア開発も注目の技術の一つとして挙げている。同社はこの技術分野について「ほぼ全ての業界に確実にメリットをもたらす」と考えている。特に以下の特性がある業種は、この技術によるメリットを享受できるという。
- 業務プロセス数が膨大になる
- ソフトウェアのカスタマイズに対して強いニーズを持つ
- イノベーション(技術革新)サイクルを高速化している
ただし、ローコードおよびノーコード開発ツールを導入することによる費用対収益のバランスについては調査では明らかになっておらず、あらゆる種類のソフトウェアやアプリケーションに適するとは限らない。
ローコードおよびノーコード開発ツールの採用を阻む要素としては、知的財産やソースコード品質に関連するものがあり、レポートは以下の可能性について警告している。
- 自動生成のソースコードを用いるアプリケーションにおいて、セキュリティリスクが増加する可能性
- 自動化されたコードレビューでは、欠陥や非効率な部分が見落とされる可能性
- AI(人工知能)技術を使って記述するソースコードについて、知的財産に関連する問題が発生する可能性
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