英国の医療機関が「プレハビリテーション」をデジタル化 期待の効果は?:患者の取りこぼし抑止にも
英国の医療機関BHRUTが、外科手術を受ける患者約700人に手術前後の準備や回復期に役立つアプリケーションを提供する。これによって病院の運営や、患者の健康状態はどう変わる可能性があるのか。
英国の国民保健サービス(NHS:National Health Service)の下で運営される公的医療機関Barking, Havering and Redbridge University Hospitals NHS Trust(以下、BHRUT)が、外科手術を受ける患者を支援するアプリケーションを発表した。BHRUTは同アプリケーションを、手術前の患者を身体と心理面の双方から支援するためのアプリケーションを開発するSurgery Heroと共に開発した。
「プレハビリテーション」をアプリで提供 その狙いは?
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患者はBHRUTとSurgery Heroが開発したアプリケーションを使い、手術前後に病院からの支援を自宅で受けることができる。以下はその一例だ。
- 病院との1対1でのカウンセリング
- 個々人に合わせた健康管理プログラム
- 類似の悩みを抱えた患者で構成されるピアサポートユーザーグループへの参加
アプリケーションは、患者の睡眠時間や身体活動量など、健康状態を把握するためのデータを蓄積する。患者はそのデータを、自身の健康状態の指標として確認できる。アプリケーションは、患者が手術前に感じる不安を軽減したり、手術後の合併症の発生を抑制したり、手術後の患者の回復を早めたりすることを目的としている。
NHSを運営する組織NHS Englandの調査によると、当日キャンセルになる手術のうち約3分の1は、手術までに糖尿病や高血圧といった持病が適正に管理されておらず、外科治療を受ける準備が整っていないことによるという。
BHRUTのアプリケーションは、手術を受ける患者の“待機リスト”を、手術を受けるに当たっての“準備リスト”に変えるものだ。患者が手術をただ待つのではなく、手術前に健康状態を改善できるように設計されている。
外科コンサルタントで一般外科専門医としてBHRUTに勤務するビール・シャトカー氏は、「ハイリスクな待機的手術(患者が手術を受けることができる状態になるまで待ってから施す手術)を受ける患者を支援するアプリケーションを発表できたことをうれしく思う」と話す。
シャトカー氏は、「手術前に身体と心理面からの準備を提供する『プレハビリテーション』が、手術後の患者の健康状態に有意な差をもたらすことは研究で明らかになっている」と述べる。プレハビリテーションの効果としては、患者の早期回復や早期の職場復帰、入院期間の短縮などが挙げられる。冬季に患者数が増加することに備えて、「病院に患者を収容する能力の向上や、スタッフの負担軽減につながることも期待している」とシャトカー氏は付け加える。
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