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「銀行強盗ゼロ」達成のデンマーク その“納得の理由”と“新たな脅威”とはキャッシュレス社会の光と影【前編】

デンマークでは、2022年の銀行強盗件数が0件だった。「銀行強盗がなかった」こと自体は喜ばしいことだ。ただし、その裏には「心配すべきこと」がある。それは何か。

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 2022年、デンマークでは銀行強盗の発生件数が0件になった。その要因は、銀行が物理的セキュリティを強化したことだけではない。もう一つの理由は、

  • 社会のキャッシュレス化が進み、銀行が大量の現金を店舗に保管しなくなった

ということだ。一方でオンラインバンキングの詐欺が増えていることが、デンマークの金融業界団体Finans Danmarkの調査で分かった。お金を狙った犯罪者は“強盗”の場を、サイバー空間に移している。

キャッシュレス社会が招いた新たな脅威

 2000年から2022年までのデンマークにおける銀行強盗の発生件数(Finans Danmark調べ)は、以下の通りだ。

  • 2000年:221件
  • 2004年:121件
  • 2021年:1件
  • 2022年:0件

 デンマーク金融業界の労働組合Finansforbundetの副委員長、スティーン・ルンド・オルセン氏は「2022年、銀行強盗がなかったのは素晴らしいことだ」と語る。「銀行強盗が発生すれば、銀行員に大変な負担がかかる」(オルセン氏)

 北欧諸国は近年、キャッシュレス社会への移行に注力してきた。デンマーク、ノルウェー、スウェーデンを合わせた3カ国ではデジタル決済が浸透し、現金使用率は10%を下回っているという。「Vipps」といった、FinTech(金融とITの融合)企業によるデジタル決済ツールの提供も盛んだ。これらのツールは現金を持ち歩かなくてもいいという利便性や使いやすさから、消費者の間で人気が高まっている。

 キャッシュレス社会の到来が呼んだのは、オンラインバンキング詐欺の増加だ。Finans Danmarkによると、オンラインバンキング詐欺は物理的な銀行強盗と比べ、犯罪者にとってリスクが低いだけではなく、もうけも大きくなる傾向がある。そのため、今後も活発になる可能性があるという。


 後編は欧州で生じている、詐欺の新たな潮流を見る。

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