自閉スペクトラム症向け「VR」訓練は“見た目が大事”の真意は 実践校が語る:英国特別支援学校の「VR」活用【後編】
自閉スペクトラム症(ASD)の子ども向けソーシャルスキルトレーニングに「仮想現実」(VR)を活用した英国の特別支援学校Bettridge School。同校の校長が明かす、VR活用において配慮したこととは。
英国の特別支援学校Bettridge Schoolは「仮想現実」(VR)技術を活用し、自閉スペクトラム症(ASD)の学習者向けに、「ソーシャルスキル」(対人関係や集団生活を構築するスキル)など各種スキルのトレーニングを実施している。大きな課題として同校が捉えているのは、ASDの学習者が、現実世界で人とやりとりをすることの難しさだ。「現実世界は、特にASDの人にとっては、本当に怖い場所なのだ」と、同校の校長、ジョー・ブリーズデール氏は言う。
「VRによるASD学習者向けトレーニング」は“見た目が大事”な理由
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連載:英国特別支援学校の「VR」活用
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ほとんどの人からすると日常的な「商店に入る」という行為が、ASDの人にとっては大変な労力を必要とする場合がある。VRならば、余計なものを除外した安全な環境で、商店という場所に慣れてもらうことができる。ブリーズデール氏は、この点がトレーニングに有用だと評価。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるロックダウン(都市封鎖)中に使えて、かつ将来も役に立つ仕組みの構築に至ったという。
「VRで訪れる商店が、現実の商店と全く同じ見た目であることが極めて重要だ」とブリーズデール氏は言う。商店であれば何でもよいわけではなく、訪問する現実世界の店舗と同じものでなければならない。「ASDの人は、見たものをそのまま受け取る傾向にある。トレーニングに活用する仮想環境は『実物と同じ“ような”ものであればいい』というわけにはいかない」と同氏は説明する。
Bettridge Schoolの取り組みを支援するITコンサルティング会社CGIのシニアバイスプレジデント、パトリック・ハッチングズ氏によれば、この取り組みは「自社の技術を応用すれば、ASDの学習者のために効果的なトレーニングができるはずだ」と考えたCGIの従業員が提案したものだったという。ハッチング氏は、今後こうした事例を他の教育機関にも提案し、発展させたいと考えている。
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