勉強しながら働く「若手の実習生」を英自動車メーカーが重宝する理由:技術者不足に切り込む自動車メーカー【前編】
英国の自動車メーカーJaguar Land Roverが、政府が実施する人材育成制度を使って約300人の見習い従業員を募集する。深刻な人材不足の解消に向けた同社の打ち手とは。
英国の自動車メーカーJaguar Land Rover(以下、JLR)は2023年2月、英国政府の人材育成制度「アプレンティスシップ制度」を利用して約300人の若者を募集すると発表した。アプレンティスシップ制度は、英国政府と企業が連携し、実習生に対して給与を支給しながら実践的な職業訓練と高等教育を提供する。JLRがこの制度を利用する背景にあるのは、技術者不足の深刻化だ。
実習生の給与と学費を負担してでも人材育成
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JLRは、独自の若手人材育成プログラムである「Early Years Careers Programme」の一部として、アプレンティスシップ制度を活用した人材育成を実施している。同社がアプレンティスシップ制度を利用して実施するプログラムは、以下の分野で実習生を募集する。同プログラムの実施を通じて、自動運転車といった分野でイノベーションに携わる人材を確保する。
- 車両電動化
- 自動運転
- 機械学習などのAI(人工知能)技術
- データ分析
- ソフトウェアエンジニアリング
Early Years Careers Programmeの責任者であるJLRのアン・マリー・カンピオン氏によると、アプレンティスシップ制度を使った同社のプログラムは人気がある。カンピオン氏は、「トレーナーから学んだ実習生は、当社の車両電動化に関する戦略『Reimagine』と、将来の成功の基礎となる『未来の自動車開発』を支える存在になる」と述べる。
JLRがアプレンティスシップ制度を使って募集する約300人の半数は、同制度のプログラムの一つ「Degree Apprenticeships」に配置される。Degree Apprenticeshipsの実習生の学費は企業が負担する。実習生は学費の心配をすることなく、企業で実務経験を積みながら給与を得て、学位を取得できる。JLRは、同社の初任給が平均値を上回ることを踏まえて、実習生にとっては同社への就職がより身近で、選択しやすいものになるとみる。
Early Years Careers Programmeは、アプレンティスシップ制度以外にも、大学生や大学院生を対象としたプログラムを含め、全部で約800人の募集枠を設けている。
英国では、適切なスキルを持つ技術者不足が技術開発の妨げになっているとの声が企業から上がっている。ビジネスに必要な特定のスキルを身に付けるための仕組みであるアプレンティスシップ制度に企業が目を向けるのは、業務の遂行に必要な技能を持つ人材を確保することが狙いだ。
後編は、実際にアプレンティスシップ制度を利用する学生が語る、同制度のメリットを紹介する。
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