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Microsoftが買収した“謎”のDPUベンダー「Fungible」の正体Fungible買収でMicrosoftが狙うのは【後編】

Microsoftが買収したDPUベンダーFungibleは、業績が急速に悪化していた。ベンチャーキャピタルも期待していたFungibleが抱えていた課題とは。

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 Microsoftが買収したFungibleは、DPU(Data Processing Unit、データ処理装置)開発の新興企業だ。Fungibleはどのような会社なのか。

“謎”のDPUベンダーFungibleの正体

 Fungibleは、ネットワークベンダーJuniper Networksの共同創業者であるプラディープ・シンドゥ氏と、Appleのソフトウェアエンジニアリング担当シニアバイスプレジデントを務めたバートランド・サーレイ氏が2015年に設立したベンダーだ。ベンチャーキャピタル(VC)から約3億ドル(約408億円)の資金を調達したが、2022年8月、従業員を解雇したり、事業を縮小したりした。

 苦戦の一因は、DPU市場の競争の激化だとみられる。2020年、NVIDIAはネットワーク製品ベンダーMellanox Technologiesを買収し、Mellanoxの技術を生かしたDPU「NVIDIA BlueField」を投入した。2022年には、Advanced Micro Devices(AMD)がDPU開発のPensando Systemsを買収してDPUに注力する戦略を打ち出した。

 調査会社Evaluator Groupのシニアストラテジスト兼アナリスト、ランディ・カーンズ氏によれば、Fungibleの戦略は、サーバをカスタム設計のハードウェアで置き換えることの提案活動が柱だった。しかしユーザー企業にとって、ハードウェアの置き換えによるシステムの再設計は大掛かりな取り組みになる。そのため、こうした提案活動は「短期的にはFungibleの収益につながらなかった」とカーンズ氏は説明する。

 独立系アナリストのティム・スタマーズ氏は、「Fungibleが目指していたことは非常に野心的だった」と述べる。一方でユーザー企業にとっては、FungibleのDPUを利用するためにシステムのアーキテクチャを大幅に変更しなければならないことがネックになったとスタマーズ氏は指摘する。

 スタマーズ氏によると、FungibleのDPUの設計はオープンソースソフトウェア(OSS)とプロプライエタリ(ソースコード非公開)ソフトウェアの2つに依存し、ユーザー企業にとって決して使いやすいとは言えなかった。「Fungibleはビジネスが軌道に乗る前に、ベンチャーキャピタルの資金が枯渇してしまった」(同氏)。今後はFungibleの社名が消え、Fungibleの技術はクラウドサービス群「Microsoft Azure」に組み込まれる可能性があると同氏はみる。

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