「DPU」(データ処理装置)と「SmartNIC」の違いを解説 なぜ両者が必要?:IT管理者が知っておくべき「DPU」の役割【中編】
企業のシステム設計において重要性を増してきた「DPU」。DPUが登場する以前には「SmartNIC」があった。それぞれCPUからどのような役割を引き受け、それがなぜ必要なのか。
CPUの過負荷の問題を解消するために、幾つかの方法が登場した。ネットワークカード(NIC)へのオフロードだけでは解決せず、「SmartNIC」が登場し、それに続いて「DPU」(データ処理装置)が登場した。
NIC、SmartNICから「DPU」への進化
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連載:IT管理者が知っておくべき「DPU」の役割
DPUはなぜ必要?
企業が頻繁にデータを扱うようになる中で、NICにパケット(ネットワークで送受信するデータの伝送単位)の処理をオフロードするだけでは不十分になった。その結果、パケット処理のオフロード以外のタスクも担うSmartNICが誕生した。NICに対するSmartNICの特徴はプログラム可能な機能を備えていることや、独自のCPUやメモリ、OSを備えていることなどにある。
基本的にSmartNICはNICよりも多くの処理をCPUからオフロードすることができる。SmartNICの製品ごとに違いはあるものの、オフロードの対象は
- データの圧縮と解凍
- 暗号化と復号
- セキュリティ系の処理
といったタスクが一般的だ。
SmartNICの価格は一般的なNICよりも高くなる傾向にあるが、圧縮と解凍や、暗号化と復号のためにサーバのタスクを遅滞させたくないのであれば、NICではなくSmartNICを使うのは当然の選択だと言える。
DPUとは何か
帯域幅(回線路容量)のより広いネットワークが登場し、企業のIT管理者はストレージを接続するネットワークに高速性やさまざまな機能を求めるようになった。そうした中で、SmartNICを進化させたDPUが登場した。
DPUがプログラム可能であることや、CPUを搭載する点はSmartNICと同じだが、両者は異なる。DPUは、特定の用途向けにプログラム可能な集積回路である「FPGA」(Field Programmable Gate Array)や「ASIC」(Application Specific Integrated Circuit)のような、カスタム可能なプロセッサを搭載する。DPUはさまざまなタスクのオフロードを引き受けることが可能だ。その対象としては例えば
- プログラミング言語「P4」で記述するデータプレーン
- ステートフルファイアウォール(ファイアウォールの一種、通過可否を動的に判断する)
- レイヤー2(L2:データリンク層)およびレイヤー3(L3:ネットワーク層)のスイッチ
- レイヤー(L4、トランスポート層)のロードバランシング(負荷分散)
- ストレージの管理や解析
- VPN(仮想プライベートネットワーク)
などがある。
DPUはI/O(入出力)などの性能に優れたストレージを利用する際に役立つ。ストレージインタフェース規格「NVMe」(Non-Volatile Memory Express)準拠のストレージと同じように、DPUを利用することで低レイテンシのストレージ接続を実現できる可能性がある。これはDPUの重要な成果だが、まだストレージ用のネットワークにおいては課題がある。その一つが、ブリッジ(中継器)やスイッチを取り入れたネットワーク「スイッチドネットワーク」における課題だ。
後編は、DPUとスイッチドネットワークの関係を解説する。
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