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公共放送局が「DX」で“Netflixに勝つ日”BBCのDX戦略に立ちはだかる「理想と現実」【第3回】

実効性には懐疑的な見方もあるものの、公共放送局BBCはDXを推進すべく、さまざまな変革に着手している。既存の動画・音楽配信サービスとの競合も見据えた、同局の取り組みとは。

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 公共放送局BBC(英国放送協会)がデジタル分野での成長を加速させるためには、リーダーシップの進化が必要だ――。英国会計検査院(NAO:National Audit Office)が2022年12月に公開した報告書「A digital BBC」は、こう指摘する。デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を表明しているBBCは、自身の状況をどのように認識しているのか。

“打倒Netflix”も見据えたBBCの覚悟

 英国公会計委員会(PAC:Public Accounts Committee)は2023年1月、BBCのDX戦略についての証人喚問を実施。証人喚問の場で、BBC最高執行責任者(COO)リー・タバジバ氏に対して「BBCが目指す新しい組織は、ITアーキテクチャの点でどのような変化があるのか」と問いかけた。

 タバジバ氏の回答によると、BBCはこれまでのデザインエンジニアリング部門を、製品分野、特にデジタルコンテンツやサービスを提供するためのチームと、放送やオンラインインフラを管理する技術チームに分割した。サイバーセキュリティや、コンテンツを視聴者に届ける配信技術の基礎に関わる運用体制の変更も進めているという。こうした変更を通じて「価値を発揮する能力を下支えする“リーダーシップ”を養うことができた」というのが、同氏の主張だ。

 BBCがDXを推進する上で焦点を当てているのは、一般的な技術力ではなく「技術チームと製品チームが、デジタルサービス実現のためにテストを重ねつつ、機敏に協働するアジャイル開発手法だ」とタバジバ氏は説明する。これは「Netflix」「Spotify」といった、継続的に利益を上げている動画・音楽配信サービスに対抗するために「不可欠だ」と同氏は説明する。

 「適切な組織再編によって、技術チームの価値発揮能力を向上させること」と「全てのコンテンツ制作者に視聴者のニーズの変化を理解してもらい、視聴してもらうために何をすべきかを考えてもらうこと」は「全く別の問題だ」とタバジバ氏は強調する。放送だけではなく、デジタル配信も含めて「私たちはBBCの能力を最適化し、複数のチャネルを支援しなければならない」と同氏は説明。より魅力的なデジタルコンテンツやサービスを提供するために、放送事業に充てていた予算の一部をデジタル分野に移動させているという。


 第4回は、DXに挑戦する上で、BBCが直面する予算制限以外の問題を紹介する。

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