コオロギが交尾を急にやめたら“あれ”が近い? 「AI」で分かった意外な関係:AIで進化する「食用昆虫」産業【第2回】
コオロギを食料にする「コオロギ食」が世界的ブームになる中、コオロギ養殖の効率化に人工知能(AI)技術を活用する動きがある。こうした活動から明らかになった、意外な相関関係とは。
食料としての昆虫(食用昆虫)が、環境に優しい食料として世界的に脚光を浴びている。こうした中、養殖場支援ベンダーEntoverseの共同創設者兼CTO(最高技術責任者)、ドミトリー・ミハイロフ氏は、シンガポールのスタートアップ(新興企業)とチームを組んで、コオロギ養殖場の運用効率化に取り組んでいる。チームが活用するのが、画像認識などの人工知能(AI)技術を駆使して収集した、コオロギに関するさまざまなデータだ。どのようなデータを収集し、どのように活用しているのか。
データで見えた「コオロギの交尾」と“あれ”の意外な関係
併せて読みたいお薦め記事
連載:AIで進化する「食用昆虫」産業
第一次産業でのAI活用
収集したコオロギに関するデータは、コオロギ養殖の効率化に役立つ。コオロギの性別に加えて、与えている餌の種類や量、天候といったさまざまなデータを組み合わせて分析し、コオロギにストレスが掛かる状況を回避できるようにする。餌に関するデータを基に、コオロギの健康に最適な餌を判断することが可能になるという。
EntoverseはこうしたデータをAIエンジンに投入して、今まで見えなかった相関関係を明らかにした。例えば100キロ先から接近する台風を感知すると、コオロギが交尾を停止するといったことだ。こうした相関関係があることは「誰も知らなかった」と、ビッグデータとAIの博士号を持つミハイロフ氏は述べる。
欧州にある主要な大規模養殖場は「データとそこから得た洞察を利用して、温度、湿度、換気などのパラメータを自動調整している」とミハイロフ氏は言う。一方でタイやインドネシアなど東南アジアの養殖場は、概して小規模だ。「小規模養殖場でも、同じようにデータと洞察を利用して業務プロセスを改善し、人的ミスを減らせる」と同氏は主張する。
Entoverseはコオロギに加えて、食用昆虫(食料としての昆虫)になる他の昆虫の養殖を支援するAIエンジンの開発を計画中だ。例えば以下の昆虫を対象にする。
- バッタ
- ミールワーム(ゴミムシダマシ科の幼虫)
- アメリカミズアブ(BSF:Black Soldier Fly)
- 幼虫が有機廃棄物を動物の飼料に変える能力を持つ。
次回からは、Entoverseのさらなる取り組みを紹介する。
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.