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「軍事用AI」の賛成国と反対国それぞれの見方と、解消できない“格差問題”AI技術の軍事利用【第3回】

AI技術の軍事利用を巡り、各国の意見は割れている。この技術の実用化に賛成する国と反対する国それぞれの意見と、両者の間に存在する格差とは。

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 人工知能(AI)技術の軍事利用について、さまざまな議論が繰り広げられている。AI倫理の専門家エルケ・シュワルツ氏は、「賛成国と反対国の間に存在する格差について、十分に議論されていない」と指摘する。

賛成国と反対国の間に存在する“格差”

 米国議会調査局は2022年11月に軍事技術に関するレポート「Emerging Military Technologies:Background and Issues for Congress」を発表。これによると、約30カ国と165の非政府組織(NGO)は、人間がほとんどあるいは全く介入せずに標的を選定、探知、交戦できる自律型致死兵器システム「LAWS」の使用禁止を求めている。背景には、責任の欠如の可能性や、紛争に関する国際法への非準拠といった倫理的懸念がある。

 これとは対照的に、米国や中国、ロシア、韓国、欧州連合(EU)などの政府が、AI技術の軍事利用を推進している。シュワルツ氏は、「各国のパワーバランスが崩壊している」と指摘する。中国やロシア、米国といった大国は、大国同士の争いを抑制するために、「一国が軍事用AIを持つ場合は、他の国も同様に軍事用AIを保有すべきだ」と主張する。一方で同氏は「戦争の被害をより強く受ける国々が、軍事用AIの利用について発言権を持ち、技術の利益を享受するべきだ」と語る。

 戦争で標的となる国のほとんどは、LAWSのようなシステムを禁止するか、厳しく規制する国際的な法的枠組みがあるべきだという意見で一致している。しかし列強諸国は、「技術のイノベーションが妨げられる」ことを理由に、これに反対する。

 「同盟国間では、AI技術の軍事利用を巡って力差が表面化する可能性がある」とシュワルツ氏は話す。各国は、同盟国間の中で力を持つ国に従う傾向にあるためだ。同氏は例として、米国陸軍が実施する国際的な軍事演習プロジェクト「Project Convergence」を挙げる。このプロジェクトは米国とパートナー諸国が戦闘時にどう動くかを演習するもので、英国も参加する。「軍事技術の導入方法や、技術に課される制約について、米国は英国よりも強い発言権を持つようになるだろう」と同氏は語る。

 「各国がAI技術の可能性に心を奪われている現状では、その格差が十分に考慮されていないと指摘しておきたい」(シュワルツ氏)


 第4回は、AI技術の軍事利用に当たり、公の議論が必要な理由について紹介する。

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