「AI製品」の4割はうそ? 盛り過ぎ広告にFTCが“激おこ”の真相:AIウォッシングに警鐘【前編】
OpenAIの「ChatGPT」をはじめとするジェネレーティブAI製品が急速に普及する一方、“偽りのAI製品”がはびこり始めている。こうした中、AI技術に関する誇大広告を問題視する動きがあるという。何が起きているのか。
米連邦取引委員会(FTC)は、「AI」(人工知能)技術に関する誇大広告を控えるよう、ベンダーに対して強く警告を発した。「『AIを備える』などとうたうIT製品の中には、宣伝通りに機能しないものがある」。FTC広告慣行部門(Division of Advertising Practices)のマイケル・アトレソン弁護士は、同委員会の公式ブログで2023年2月に、こう指摘した。実際のところはどうなのか。
“偽のAI”が4割――止まらない誇大広告の実態
FTCはAI技術に関する規制を強化しようとしている。「ベンダーのマーケティング担当者は、自社製品の効能に関する『虚偽の広告』や『根拠のない宣伝文句』が、規制の対象になることを理解すべきだ」とアトレソン氏は語る。
テキストや画像などを自動生成するAI技術「ジェネレーティブAI」(生成型AI)の爆発的な普及が、FTCによる警告の背景にある。ベンダーのマーケティング担当者は、自社のIT製品と、「ChatGPT」などのジェネレーティブAIとの連携を模索している。OpenAIのAIチャットbot(AI技術を活用したチャットbot)であるChatGPTは、ジェネレーティブAIを実装したIT製品の代表格として、急速に利用を広げている。
「企業は幾度となく、突拍子もない宣伝を打ち出してきた。その中には真実もあれば、虚偽もあった」。Northeastern University(ノースイースタン大学)のマイケル・ベネット氏はこう語る。ベネット氏は、同校のAI研究施設Institute for Experiential AI(EAI)で、AI技術の公平性や透明性を確保する「責任あるAI」(レスポンシブルAI)のビジネス責任者を務める。
AI技術の誇大広告は、米国だけで問題となっているわけではない。ChatGPTをはじめとするジェネレーティブAIに限った話でもない。
英国のベンチャーキャピタルMMC Venturesは2019年、欧州13カ国で「AI専門」をうたうスタートアップ(創業間もない企業)2830社に調査を実施した。調査では「人間の知能を必要とするタスクをこなすコンピュータシステム」という、AI技術の一般的な解釈に沿ったIT製品を開発しているのは、約6割の1580社にとどまった。つまり約4割は“偽りのAI製品”ということになる。
次回は、AI技術に関する誇大広告のリスクと、こうした誇大広告を規制する米国の動きを解説する。
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