「開発者だけで作るアプリケーション」が成功しにくい“当然の理由”:セキュアコーディングの極意【第5回】
アプリケーション開発を進める上で、設計段階からセキュリティを確保する「セキュアコーディング」には、ステークホルダーの協力が不可欠だ。どのような人を巻き込むべきなのか。
凶悪化するサイバー脅威に備える上で、セキュアなアプリケーションを開発するにはどうすればよいのか。有効な手法が、開発の早期段階からセキュリティを意識する「セキュアコーディング」だ。
セキュリティとガバナンスを推進する非営利団体ISACAの取り組み「Emerging Trends Working Group」に参加するエド・モイル氏によると、アプリケーションが十分な安全性を確実に確保するには、ステークホルダーを巻き込むことが欠かせない。具体的にどういうことなのか。
なぜ開発者だけのプロジェクトは成功できないのか?
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連載:セキュアコーディングの極意
- 第1回:セキュリティの“いたちごっこ”が終わらない現実
- 第2回:AIは「開発のテスト」をどう変える? “単純作業の終わり”は基本の「き」
- 第3回:「シフトレフト」でセキュアコーディング まずやるべき基本は?
- 第4回:リソース不足の開発チームが「成功を託した手法」はこれだ
事例から開発手法を学ぶ
アプリケーション開発に携わるステークホルダーは、開発プロセスへの参加方法や受けたトレーニング、意識の度合いなどが異なる。そうした違いは、プロジェクトにリスクを持ち込んだり、あるいはリスクを低減したりする可能性がある。「可能な限りプロジェクトに携わる全ステークホルダーの懸念を考慮して、アプリケーションのリスクを削減、管理、軽減するように設計する必要がある」とモイル氏は助言する。
モイル氏はIT部門の責任者に対して、リスク軽減を支持するステークホルダーが求める対策の強化を推奨する。コーディングは、アプリケーションのセキュリティ対策全体の一部に過ぎない。アプリケーションの開発およびリリース段階では、コーディングが最も目立つ手順だと言える。「だがコーディングだけを重視すべきではない。リスク管理の取り組みは、開発サイクル全体で実施しなければならない」(同氏)
アプリケーション開発プロジェクトのセキュリティ責任者は、開発サイクル全体を総合的に理解した上で、責任を持つことが重要だ。その上でさまざまなステークホルダーと接触することをモイル氏は推奨する。開発プロセス以外の関係者も考慮して、プロジェクトを推進しなければならない。具体的には以下の関係者の代表者を選び、開発チームと一体になって、アプリケーションのセキュリティ向上に取り組む必要がある。
- テスト担当者
- ビジネスアナリスト
- プロジェクトマネジャー
- プロダクトマネジャー
- サポートチーム
- 営業部門
- マーケティング部門
- 人事部門
- 法務部門
次回は、アプリケーションのセキュリティ向上を図るために、IT意思決定者が実施すべき取り組みを紹介する。
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