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女性の“IT業界離れ”が止まらない 「オフィス回帰」が離職の引き金に?英国のIT業界に「女性離れ」の波【前編】

英国のIT業界では女性労働者の比率が減少傾向を示している。IT業界から女性が離れていく原因は何なのか。専門家は「状況は複雑だ」とみる。

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 英国では、IT業界から離れる女性が増加しつつある。英国国家統計局(ONS)が2023年8月に公開した産業別・性別別の雇用データによると、IT業界の労働者(男女合計)は2023年第1四半期(1月〜3月)から第2四半期(4月〜6月)の間に約8万5000人増加した。しかし2022年第4四半期(10月〜12月)から2023年第1四半期(1月〜3月)にかけて、IT業界の女性労働者は約1万7000人減少し、2023年第1四半期(1月〜3月)から第2四半期(4月〜6月)に約3000人減少していた。

 この状況は、多様な人材の雇用に重点を置くよりも、既存の人材に長く働いてもらうことを重視する時期が来ていることを示しているのか。

オフィス回帰が引き金に? 女性がIT業界を離れる事情とは

 IT業界から女性が離れていく原因は何なのか。人材コンサルティング企業Nash Squaredでテクノロジーとデジタルの管理職スカウト部門の責任者を務めるリリー・ハーケ氏は、状況は複雑だと考えている。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が収束しつつある中で、大企業が週何日間かのオフィス勤務を義務付けるルールを従業員に要求することが目立つようになった。現場で働く必要がそれほどないとしても、オフィス勤務のポリシーを厳密に適用するようになってきた。

 家事を担う人にとって現場勤務は負担になる。ハーケ氏は、非営利団体Oxfam Internationalが公開した記事「Not all gaps are created equal: the true value of care work」に基づいて次のように説明する。「世界で無給の家事・育児の4分の3以上を引き受けているのは女性だ。この種の義務は、女性に不公平な負担を与えることになる。だからオフィス回帰を義務付ければ、女性に影響を及ぼすことは容易に想像できる」

 英国で保育費が法外に高騰していることも、IT業界から女性が離れる要因の一つだと考えられる。ハーケ氏は「ロンドンでのフルタイムの保育費は、子ども1人当たりで年間約1万7000ポンドかかる。子どもを2人抱えて生活するには約5万ポンドの収入が必要になる」と語る。たとえIT業界の平均給与が比較的高額だとしても、誰もが最高情報責任者(CIO)のような待遇を受けられるわけではない。

 問題を深刻にしているのは、全ての学校が放課後の「ラップアラウンドケア」(訳注:学童保育やアフタースクールなど、子どもとその家族を地域全体で支援する仕組みやサービス)を提供しているわけではないことだ。ハーケ氏は「子育てをしながらでも働きやすい職場はIT業界にあるのだろうか」と疑問を投げ掛ける。IT業界では長時間労働や出張を求められることが珍しくない。「それほど要求の厳しくない職場があるとしても、子どもを抱えていると耐え切れないものだ」(ハーケ氏)


 中編は、賃金格差や経済の冷え込みがもたらす影響について、専門家の見解を紹介する。

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