英大学が「セキュリティリーダー向けのMBA」を開講 その理由とは?:経営にも欠かせなくなるセキュリティ知識
英ランカスター大学が、MBAにサイバーセキュリティの視点を組み合わせたプログラムを開講した。その背景には、英国企業の経営層に根強く残るサイバーセキュリティに関する課題がある。
英国のランカスター大学(Lancaster University)は、サイバーセキュリティを組み合わせた新しいMBA(経営学修士)プログラム「CEMBA」(Cyber Executive Masters in Business Administration)を開講した。同大学のビジネススクールLancaster University Management School(LUMS)が提供するこのMBAプログラムは、企業の幹部を目指す受講生に、サイバーセキュリティの分野でリーダーシップを発揮するための教育を提供する。
ランカスター大学はサイバーセキュリティのコンサルティング企業Templar Executivesの助言を得て、CEMBAを開講することにした。新しいMBAのプログラムを立ち上げるに当たり、同大学は英国立サイバーセキュリティセンター(NCSC)の支援と認定を取り付けた。同大学は、サイバーセキュリティに関する教育実績を持ち、NCSCが認定するサイバーセキュリティの修士課程、学士課程を提供してきた。
経営層がサイバーセキュリティを学ぶ理由
併せて読みたいお薦め記事
サイバーレジリエンスの向上に取り組む
経営管理とITの知識を組み合わせることで、受講者がサイバーセキュリティにおけるリスク管理の能力と自信を身に付けることがCEMBAの目的だ。経営層にはサイバーセキュリティの知識とインシデント対処のスキルが求められるようになっているが、現状、経営層の知識やスキルは不足する傾向にある。
CEMBAは「実践に基づいた課題主導型のカリキュラム」を通じて、サイバーセキュリティの分野を統率するリーダーが実践すべき重要な行動に焦点を当てる。特に、サイバーセキュリティの維持と、攻撃に対するレジリエンス(回復力)の確保に向けて、組織の中でリーダーが技術者やその他の従業員と協力するための方法を探る。
Templar ExecutivesのCEO、アンドルー・フィッツモーリス氏は次のように語る。「企業や経営陣にとって、サイバーセキュリティのリスクが大きな関心事の一つとなっている。CEMBAは、サイバーセキュリティの実践的な課題に取り組む企業のリーダーに必須のスキルを提供する」
NCSCの認定を取得することで、学生に対してMBAプログラムの信頼性と質を保証することができる。留学生にとっては、英国の大学へ留学すること自体が魅力的なものになることも考えられる。NCSCの認定を受けるには、少なくとも過去1年以上MBAプログラムを実施し、卒業生を輩出していることが条件となる。
「学位がNCSC認定であることは、入学希望者にとってはプログラムの質がより確かなものである根拠になる。雇用主にとっては、MBAの修了生がサイバーセキュリティに関する有意義なスキルを身に付けていることを確認するための情報になる」。NCSCのサイバー成長担当副局長クリス・エンソ―氏はそう説明する。
ランカスター大学はCEMBAの提供について、同大学をサイバーセキュリティの専門知識、研究、訓練の集積地にする取り組みの一環だと説明する。セキュリティ産業が成長しているイングランド北西部において、同大学が果たす役割は大きくなる見通しだ。同大学は、グレーター・マンチェスター州で2022年に運営を開始した、サイバーセキュリティ分野のイノベーションを支援するプロジェクト「マンチェスターデジタルセキュリティハブ」(DiSH:Greater Manchester Digital Security Hub)の運営にも協力。英政府の国家サイバー部隊(NCF)も支援しているという。
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.